キミとボクの恋戦争
◇
「ユウくん、どないしたん?顔色悪いわよ」
「小春ぅ…」
生徒会の仕事で昼は一緒におられへんって言われて、そんで光と二人になったんやっけ。
先程の経緯をぼんやり思い返しながら、涙目で小春に縋り付いた。
毎回少し離ればなれになっただけでもこうやって抱きついたりするけど、今日はいつもと雰囲気が違うって悟ったのか、小春は引き剥がすこともせず俺の好きなようにさせてくれた。
「ユウくん、変よ?ほんまどないしたん?」
「…光が、」
「光?光と何かあったん?」
「…」
「黙ってたらわからへんやないの。…うじうじしとるユウくん、嫌いやわ」
「!小春ぅ~、嫌いなんて言わんで…!」
「ほんなら、話してくれるわね?」
にこり、と笑った顔がよう似合ってんで小春!
でも、その笑顔には何したって敵わへん。
こくりと静かに頷くと、ここじゃ話しにくいわね、と笑顔で俺を教室から連れ出してくれた。
「ほんで、光と喧嘩でもしたん?」
「…喧嘩、ちゃう」
「ほんなら、何でそんな落ち込んでんの。ユウくんらしくないわよ?」
「その、…びっくりせんで、な」
「?」
「や、あの、絶対びっくりすると思うけど、でも、ちゃんと聞いてや?」
もじもじと指をくっつけたり離したりしながら、少し上目遣いで小春に念を押す。
小春もわかった、と了承の微笑をくれた。
「光が俺の事、好きやって…愛してるとか、言われてんけど」
あかん、自分で言うてて恥ずかしなってきた。
小春と目を合わすことが出来なくて、頼りなさ気に視線を落とす。
絶対小春驚いとる、声も出せへん程に。
沈黙がちくちくと身体を突き刺して、俺を遠慮なく攻撃してくる。
どれ程の時間が過ぎたのか、いや、多分過ぎ去ったのはほんの数秒だと思う。
だけど、居た堪れない時というものは、こうも時間の流れを鈍くさせるのだ。
「…小春、何か言うて」
「…ああ、ごめんな、やっぱりびっくりしてもうたわ」
「せやんな。俺かてまだ信じられへんし」
「いや、まぁ、それもあるけど…もうちょっと時間かかると思ってたから」
光もやる時はやる子なんやねぇ、って、小春がにやにやしながら何か言うとる。
え、意味がわからへん、どういう事や。
「あの、小春、それどういう…」
「あらやだ、気付いてないのユウくんだけよ?光、ずっと前からユウくんの事好きやったもの」
「!えっ…嘘やん!」
「嘘ちゃうわよ。ほんなら、蔵りんたちに聞いてみたらええわ。あ、謙也くんは知らんと思うけど」
「う、嘘ぉ…やって、アイツ俺の事いっつも馬鹿にしよって、きしょいばっかり言いよって、そんな奴が俺の事好きやと思うか!?」
「いやぁねぇ。それが愛情の裏返しってやつよ。素直ちゃうあの子らしいやないの」
そう言われればそんな気もする。
そうだとしても、だ。
なんてわかりにくい奴なんや、あの後輩は。
普段からもうちょっと可愛げなどあれば、あの時告げられた気持ちも少しはすんなりと受け入れられたかもしれないのに。
…はっ!ちゃう、間違った!
受け入れるて、アイツの想いを受け入れるみたいな言い方やんけ。
それはあかん、あかんで断じてあかん!!
俺には小春と言う大事な大事なパートナーがおんねんからな!