キミとボクの恋戦争
◇
「「あ」」
日直で少し遅れてしまったので、もう部室には誰もいないと思っていたのに。
そこには光の姿があった。
「…な、なんや、お前、もう皆コート出てんで。はよ行かなあかんのちゃうか…ってちゃうちゃう、ちゃうで、言いたいんはそんなんちゃうねん」
「…何一人でぶつぶつ言うてはるんですか。変な先輩」
「変とか言うな!や、やって、お前が昼間、あんな事言うからやな…」
赤くなった顔を見られたくなくてふいっと逸らす。
訪れる沈黙はやはり慣れるものではないな、と改めて確認。
「…もうその話はいいっすわ。止めましょう」
「は!?何言うてんねん!お前が俺にす、すすす好き、とか、あああ愛してる、とか!…言うてきたんやで!最後まで責任取れやアホ!」
「アホって何やねん。ちゅーか、逃げよってからに…俺めっちゃ傷付いたんやけど。もう立ち直れませんわ」
「せやから、ごめんって言うてるやんか!」
「いやいや、一回も聞いてませんけど。今のが初めて」
「そ、そうやっけ?…やなくて!ちゃんと先輩の話は聞くもんやで!」
「せやから、もういいですって。わかってますから、先輩の気持ち」
「は!?何知ったかぶっとんねん!何もわかっとらんくせに!」
「わかります!あんな態度とられたら、誰だって気付きますわ。アホな先輩以外は!」
「誰やねんそのアホな先輩って!」
「これやから鈍いって困りますわ。アンタの事に決まってるやろ鈍感!」
「なんや先輩に向かって!お前ホンマむかつく!!可愛くない!!」
ばんっと勢いのまま机を叩き付けた。
叩き付けた掌が、じんじんと疼いて痛む。
それから数拍置いた後に置き去りにされたシャーペンが、衝動で地面に転がり落ちる音が聞こえた。
その音がやけに響き渡る二人だけの空間。
暫くお互いの息遣いだけを聞いていたが、埒が明かないと意を決して先に口火を切った。
「…ムカつくけど!俺はお前と一緒に居ると楽しいねん!心地ええねん!」
あ、なんか、思い出しそう。
あの時、想いを告げられる直前、俺は光に今言った台詞と似たような言葉を伝えなかっただろうか。
__なんかな、光と居るとようさん笑ってる気がするわ。楽しいからかな?
ほんで、それからまだ続きがあったような…。
___光の事、ただの後輩って思われへんねやけど、何でやろ?
…アホか俺は。
光ちゃうやんけ、俺から告白しとる。
ホンマ信じられへんけど無意識やった、今の今まで思い出せない程に。