二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

B.R.C 第一章(2) 奪われた神具

INDEX|3ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 

#12.王属特務【BR】



 「な?」と振り返る翡翠の瞳に統括は苦笑いを浮かべ、一つ頷いた。

「日番谷くんは尸魂界のことや―――皆さんのことをとても気に入っているようですし、本人がそうしたいと望むなら、俺は止める気はありません。なので、日番谷くんには引き続き、尸魂界で十番隊隊長として、王属特務の任を果たしてもらおうと思います。どうか、日番谷くんをこれからもよろしくお願いします」
「おい、お前は俺の保護者か」
「うーん、上司だし、似たようなものじゃない?」
「―――って、おいおいおいおいっ!! ちょっと待て!!」

 のほほん、というのがとても似合う雰囲気で会話を進める王属特務の二人の間を切るようにして一護のツッコミの手が入る。
 一人はきょとんとして、もう一人はしかめっ面で一護を見遣った。

「何だ黒崎、うるせぇぞ」
「何だじゃねぇよ! 誰だよそいつ!!」

 そう言って一護がビシっと指を突き付けたのは、変わらず目を丸くしている少し幼さの残る青年だ。

「誰って、黒崎。お前馬鹿か。さっきからずっと居ただろ。沢田だよ、沢田」
「だから沢田って誰だよ!?」
「だから、王属特務統括隊長十代目沢田綱吉だ」
「沢田です。よろしくお願いします」

 日番谷の紹介にぺこり、と頭を下げる沢田。
 日番谷が統括と呼んでいたその人であり、十代目、ツナ、と様々な呼び名を持つ沢田綱吉。日番谷と同じく何時の間にやらこの部屋の宙空へと姿を現し、黒いマントで身を包んでいた男。額にオレンジの炎を灯し、同色の涼やかな目をしていた―――はずだった。

「全然違うだろ?!」
「全然ってことはねぇだろ。ちょっと気が抜けただけだ」
「日番谷くん、それってどうなの……」

 ははは、と苦笑うその人は、かの「統括」の面影は確かにあるが、印象が違い過ぎた。
 その額に炎はなく、瞳は髪と同色の栗色。鋭い眼差しは丸みを帯びて、どこか小動物のよう。凛とした空気はなく、ふわふわと周りの者を優しく包み込むような、言うならば浮竹に似通った雰囲気を纏った青年が、あの「統括」と同一人物とは、俄かには信じ難い。

「わかりやすく言えば、さっきまでの統括は卍解の状態で、今は通常時って感じだな」
「あー……なるほど」

 何となく納得は出来たようだが、それでも物珍しげな目が沢田を見る。それに困ったように笑いながら、沢田は元柳斎に向き直った。そして、右へ、左へと首を巡らし、

「中央四十六室の方は、日番谷を除く王属特務幹部が当たっています。あっちは彼らに任せて大丈夫でしょう」

 その声音には、仲間に対する信頼が込められているのが感じられた。
 やんわりとした声だというのに、不思議と心強い。

「今から、皆さんに、これまでの事を出来る限りお話します」

 その声が紡いだ言葉に、死神たちは緩み始めた顔をもう一度引き締めた。

「まずは、王属特務について説明をしておきましょうか。皆さん、あんまりご存知ないと聞いてるんで」

 沢田は日番谷の話を思い出しながら言った。
 霊界に関する情報は、尸魂界にはないに等しい。強いて言えば、霊王が御座(おわ)すところで王属特務とも零番隊とも呼ばれる、護廷十三隊を遥かに超える戦闘力を持つ戦闘部隊がおり、隊長格のみその部隊に昇格することが出来る、ということか。しかし、その情報も全てが正しいという訳ではなかった。

「王属特務の構造は、護廷十三隊とは微妙に異なっていてな」

 日番谷と沢田が語る王属特務。
 王属特務には、王属特務統括隊長が頂点に立ち、その下に幹部と言われる統括隊長を守護する者たちが居る。そのさらに下に強さの上下関係なく部下が存在する。つまり、王属特務統括隊長が護廷十三隊で言う総隊長に当たり、幹部が隊長、その下に副隊長、席官に当たるような地位はなく、すべてが横並びに位置する所謂平隊員というものだ。

「尸魂界の隊長が昇格して入るのは、各幹部が統率する部隊の何処かだ。いくら尸魂界では隊長だったと言っても、霊界に昇ればまた一番下からって訳だ。まぁ、護廷とは違って、王属特務には昇格なんかないようなもんだがな」
「え? それって、一生平隊員ってことっすか?」

 パチクリと目を瞬かせて阿散井が問う。

「王属特務幹部には、誰もがなれるという訳ではないんです」

 それに、沢田が応える。
 まさか、王属特務の隊長から返答があるとは思わず阿散井は慌てたが、沢田は気にした様子もなければ敬語という姿勢も崩さず、言葉を続けた。

「俺達王属特務幹部は、霊界では霊王守護者の次に霊王に近い存在になるんです。そして、霊王守護者、王属特務幹部には、霊王から特別な力を与えられます。その力を従えるだけの力を持っていないと、王属特務幹部にはなれません。もちろん、そんな人なんて滅多に居ません。今は全員守護者が埋まっているけど、四代目と七代目の統括の時代には空席もあったらしいですし」

 王属特務幹部は、それぞれ「天候」を従える力を与えられている。
 「晴」の守護者、笹川了平。
 「雨」の守護者、山本武。
 「嵐」の守護者、獄寺隼人。
 「雷」の守護者、ランボ。
 「雲」の守護者、雲雀恭弥。
 「霧」の守護者、六道骸。
 「雪」の守護者、日番谷冬獅郎。
 そして、王属特務を統括する沢田綱吉が守護するものは「大空」。
 霊王直属の守護者たちも同じ天候を守護する者が居り、「大空」を守護するのは霊王だ。このように、霊王とその直属の守護者たち、王属特務幹部は特別な繋がりを持っている。

「なんかよくわかんねぇけど、すげぇんだな王属特務の幹部ってのはよ」

 いつもなら「馬鹿者」と頭をはたいている所だが、ルキアにも王属特務のすごさというのは曖昧で、言うべき言葉が見つからずに複雑な表情を浮かべて一護の隣で収まり悪そうに身じろいだ。

「王属特務の幹部は、その天候を象った紋様が刻まれた指輪を持っているので、それを見れば何を守護する者かわかると思います」
「護廷で言う隊花みたいなもんだ」
「ほなら、十番隊長はんも持ってはるの? その指輪」

 おう、と日番谷が短く返せば、「見したって」と市丸がひょい、と一跳びに日番谷の目の前に迫る。
 日番谷は死覇装の懐を探り、

「これだ」

 と掌に指輪を転がした。

「その指輪、大事なものじゃないの? そんな所に入れて、落としちゃったら大変だよ」

 雛森が心配そうに言うものの、当の本人はまったく気にした様子もなく大丈夫だと言い切った。

「刀持つ時に指輪してると邪魔だしな。それにこの指輪、例え失くしたとしても、何でか知らねぇが絶対に持ち主んとこに返って来るんだと。幹部に雲雀っつー奴が居るんだが、そいつが断外で指輪捨てたことがあるんだが、三日後にちゃんと戻ってきたそうだ」
「……なんで?」
「知るかよ」
「ちょっとそれ、怖いですね……」

 一種の怪奇現象ではないか。青い顔で吉良は両腕を擦った。