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飛空都市の八月
飛空都市の八月
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SOUVENIR<スーヴニール>

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 新しい女王の御代になり、星々の新しい宇宙への移行も無事済んだものの、まだ落ちつかないせいもあってか、いくつかの星には不安定な状況を示すものもあった。そういった星の視察には、たいていオスカーが向かっていた。だが、オスカーは首座であるジュリアスの片腕としての任務も多い。昨日の会合の折、自分が視察に行って、少しでもオスカーの役に立ちたい、とランディは言った。だが、オスカーが言下に否定した。
 「まだ坊やには手に負えないぜ。おまえみたく、すぐカッカッするようではな」
 「カッカッなんてしていません!」
 ランディは即座に抗議した。
 「そういうのがカッカッしてるってぇんだよ」
 横で鋼の守護聖ゼフェルが茶々を入れた。
 「ゼフェル、おまえ……!」
 一瞬、いつものようにゼフェルに喰ってかかろうとしたランディだが、ふとその動きを止めて、ジュリアスに言った。
 「ジュリアス様、俺に行かせてください。俺だって守護聖なんです! もっと役に立ちたいんです!」
 ジュリアスはランディをじっと見つめていたが、やがて静かに言った。
 「駄目だ。そなたにはまだ早い」
 ランディが何か言おうとする前に、何故かさっきランディをからかったゼフェルがかみついた。
 「なんでぇ、ジュリアス! せっかくこいつがやる気になってるってぇのにその言い方は……!」
 「やめろ」
 そう言うとオスカーはゼフェルとランディの服の襟元を掴んだ。少年とはいえ二人を軽く御して、オスカーはジュリアスに言った。
 「それでは、明日より行って参ります、ジュリアス様」
 「よろしく頼んだぞ、オスカー」
 まるで二人のことなど意に介していないようにジュリアスとオスカーは言い合うと、その場は解散となった。
 「ジュリアス様、どうして俺では駄目なんですか」
 そらした視線を再び戻して、ランディは彼に問い掛けた。
 「オスカー様は、俺の年ですでにあちらこちらの星の視察に行っていたそうですね。俺だって……」
 「では、オスカーに星の視察を依頼しているのは何故かわかるか」
 笑みをたたえたまま、彼はランディに問うた。
 「……それは……オスカー様が強いからです」
 押し殺したような声でランディは答えた。
 「そなたは人を殺したことはあるか」
 唐突に彼が尋ねた。笑みは消えていた。ひどく冷たい、醒めた目つきに、ランディはたじろいだ。
 「え?」
 「そうだな……」
 彼は少し考え込むようにした後、ランディが思いもかけないようなことを言った。
 「どうだ、ランディ。オスカーのいないこの五日の間、私がそなたに剣の稽古をつけてやろう。オスカーが戻ったとき、改めて勝負を挑むがよい」
 あまりに意表を衝いたジュリアスの提案に、ランディは驚愕した。