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飛空都市の八月
飛空都市の八月
novelistID. 28776
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SOUVENIR<スーヴニール>

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 ランディがジュリアスの私邸へとりあえず剣の稽古に通いだしてから四日目、視察から予定より一日早く戻ることのできたオスカーは、とりあえずジュリアスに報告をと思い、彼の私邸に向かった。
 「中庭にいらっしゃいますが……」
 歯切れの悪い側仕えの言い様を気にしながらも勝手知ったる光の守護聖の館の中を突っ切ると、金属音がする。
 (剣の音……?)
 持っている大剣を身構えてオスカーはそろりと音のするほうへ近づいた。
 オスカーは中庭に灯された光の下、噴水の脇で、ランディが剣を持っていることに気づいた。相手は……。
 (ジュリアス様!)
 オスカーは信じられないような面持ちでその様子を見ていた。ジュリアスと馬の遠乗りや早駆けには何度も行った。チェスも相手をしたことがある。だが、剣の稽古はしたことがなかった。第一、ジュリアスに剣など不要だとオスカーは思っていた。剣を持つのは自分一人で充分だと。
 ランディはジュリアスを真っ直ぐ見て懸命に剣を振るっている。いつも自分と相手をしているときより遥かに気合いが入っているように思える。そしてジュリアスはそれを細い剣でいなしている。まともにうちあえば、ランディの剣のほうが太いだけに力負けする恐れのあるほどの細い剣だ。だが、かなりの手練れであることはオスカーにもすぐわかった。
 (何故、ランディに……?)
 声を掛けることができず、ジュリアスの側仕えには自分が来たことを言わぬよう告げるとオスカーはそのまま自分の館に戻った。何か釈然としないまま、オスカーは視察の疲れを癒すべく早めに眠りについた。