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化け物と祓魔師

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帝人がもう一度ビルの前にたどり着くと、
魔女達は怒りの感情をあらわにして、声を荒らげる。

「人間のくせに我等を害そうとするとは!」

「殺してやる!」

「裏切り者と一緒に殺してやる!」

魔女は本来穏やかで美しい生き物であった。
それが今はその面影すらない。

(憐れです・・・)

帝人は憂えた瞳を伏せながら、心の中で切望する。どうか逃げて、と。

「・・・もうこんな事はやめて、静かに暮らしてはもらえないでしょうか?」

けれど帝人の提案を嘲笑うかのように、
魔女達は杖を構えた。

「奪われたものを奪い返すのがなぜいけない!」

「我等の女王を、女王の居場所を奪った人間に粛正を!」

血走った目を向けながら魔女達が死への呪文を唱え始める。
帝人は拳を握りしめると、寂しそうに呟いた。

「園原の子供達よ、女王はこんな事など望んでいないはずだ」

しかし帝人の言葉が魔女の逆鱗に触れた。
1人の魔女が違う呪文で帝人を攻撃する。

「だまれぇぇぇ!」

赤い閃光が帝人めがけて放たれた。

「ぇ・・・」

けれど、その閃光が帝人の身体を貫通することはなく、
黒い影のようなものに遮断されてしまう。

「残念です・・・」

帝人は涙を流しながら微笑むと、
魔女達でさえ聴いたことのない呪文を唱え始める。
ぽぅっと僅かに帝人の青い瞳が光り出した。
その呪文に、瞳の光に呼応するかのように、
帝人の影が大きく揺れる。

「う、そ・・・」

「まさかっ・・・!」

魔女達の瞳が驚愕と恐怖で見開かれた。
そんな魔女達に帝人は静かな視線を向けたまま、
詠唱を唱え終わる。
その時には帝人の影は、
大きな釜を持った化け物へと変容していた。

「嘘よ・・・!嘘!だってそんなっ」

「どうして貴方様が協会にいるの!?」

「裏切ったのですか!?私たちを!!」

魔女達の叫びに帝人はゆっくりと首を振る。

「僕は裏切ってなどいないよ。ただ、この狂ってしまった世界を壊したいだけ」

影は釜を大きく振り上げる。
けれど、魔女達はその影を見てはいなかった。
彼女たちの視線は一点、帝人に集中している。

「では人を殺せば住む話ではないですか!」

「そうです!人間がいなくなればっ」

魔女達の切実なる叫びに、帝人は違う、と呟いた。

「それでは永遠に繰り返されてしまう。殺したから殺す。それでは終わらないんだ」

「っ!」

魔女達は瞳に涙を浮かべ、
どうして!と嘆き続ける。

「ごめんね・・・」

帝人はそんな魔女達にほほえみかける。
けれど、次の瞬間、帝人の表情は一変した。

「さようなら」

冷え切った帝人の声に、
魔女達は涙を流しながらこくり、と頷く。

「「御前、失礼します・・・吸血鬼の王よ」」

黒い大きな影が釜を振り落とし、
魔女達は一瞬にして灰となる。

「これで、僕の友はみんな死んでしまったよ・・・」

大釜を持った影はぐにゃりと揺れ、
水が流れ落ちるかのようにして、また帝人の影となる。
帝人はそれを確認してから、魔女達の灰を一掬した。

「さようら、園原の魔女達」

優しい笑みをした黒髪の少女の記憶と共に、
帝人の手から灰が風に乗って天へと舞い上がった。


作品名:化け物と祓魔師 作家名:霜月(しー)