化け物と祓魔師
化け物、と世間一般に言われる存在。
吸血鬼、狼男、魔女等、人外な存在をそう呼ぶ。
それらを人知れず殺すのがハンターであり、
人に存在がばれ、人が助けを求めに来るのが祓魔師である。
ハンターにはそれぞれ専属の祓魔師が付き、
その祓魔師の力が注ぎ込まれた武器を使い、化け物を処分する。
よって、その祓魔師が死ねばハンターの力も失われてしまう事になる。
なので、常に祓魔師はハンターの側にあり、逆もまたしかり。
「一蓮托生・・・ってふざけている」
六臂はハンターと祓魔師の本部がある建物が見渡せる塔にいた。
正確にはその塔のてっぺん、風見鶏の上に座りながら。
手には真っ黒な銃を持ち、その銃をクルクル回している。
「脆弱な存在を守りながら化け物を殺せって、
実践に出ていない奴だから言えるんだ」
弄んでいた銃を太陽に向かって打つふりをする。
(しかもあんな得体の知れない奴だなんて・・・!)
六臂の祓魔師は竜ヶ峰帝人、というまだ16になったばかりの少年だ。
けれど、その年でありながらランクは常に上位。
知識も技術も熟練した祓魔師と同等、それ以上と言われている。
よって舞い込んでくる任務の殆どが命を脅かされるものばかり。
しかも、彼は己が傷つくことを恐れない質らしい。
この前の任務の時は片腕一本、粉砕骨折させられたのに笑っていた。
笑いながら、詠唱を続けていたのだ。
「俺より化け物じゃん・・・」
六臂は背伸びをすると立ち上がり、
風見鶏の頭に片足を乗せそこに全ての体重をかけた。
「っと」
高い塔の上、突風が吹く。
けれどその風を全身で受け止めながら、六臂は本部を見つめた。
あそこに帝人はいるのだろう。
同じ仲間内から化け物とひそひそ言われながら。
「偽善者・・・」
六臂はポツリとそう零すと、風見鶏を軽く蹴り、その身を宙へと投げ出した。