化け物と祓魔師
2章
この世界に存在する化け物達。けれど昔からそれら全ての化け物達が狂っていたのではない。
ここ近年になり、その所行がおかしくなってきたのだ。理由は、化け物達を統括してきた王の失脚。
吸血鬼、狼男、魔女、それぞれに君臨してきた王。王は血筋から、その能力から選抜されるらしい。
吸血鬼には吸血鬼の、狼男には狼男の、それぞれに選抜方法がある。
その方法を人間が知る術はない。その王が近年選抜されることがないため、
このような傍若無人な行いが化け物達によって行なわれている。
(・・・馬鹿馬鹿しい)
帝人は心の中でそう呟くと、古めかしい表紙の本を本棚へと戻した。
苦笑を漏らしながら、薄暗い本棚を通り抜け光が差し込む出口へと向かう。
本部にある禁書を取り扱う図書室をでると、
帝人は窓に映る景色を見つめながら己の部屋へと歩みを始める。
「王か・・・」
(人はおもしろいことを考えるものだ・・・)
外ではハンターになったばかりなのであろうか、
いかめかしい男から若い男達が何か武術を教わっている。
(王を選ばないとかじゃないんだけど・・・)
帝人は重たい息を吐きながら視線を廊下に戻す。
すると廊下の少し先から見知った顔が歩いてくるのが見えた。
相手は帝人を見るなり顔をしかめてすぐに方向転換してしまう。
「ぁ」
帝人が声をかける暇もなく、黒ずくめの男は視界から消えてしまった。
彼を呼び止めるために宙に浮いた手は、
その役目を果たせないまま空しく垂れ下がる。
「嫌われているんですよね・・・」
寂しい、と思う気持ちを抑えながら帝人は頭を振ると、
もう一度執務室へ戻るべく歩みを始めた。