化け物と祓魔師
暗い階段を駆け上がり、六臂がいるであろう場所に急ぐと。
「どこいってたのさ、この偽善者」
辺は血と、血で汚れた灰に埋め尽くされていた。
六臂はその中央に立ちながら、帝人を見下すように嗤っている。
「全部・・・殺してしまったのですか?」
「そうだけど?」
帝人は心の中で悲鳴を上げているのを飲み込み、
その口元に三日月を描く。
「・・・わかりました。ありがとうございます」
ぎゅっと拳を握っていないと今にも叫び出しそうで。
声が震えていないだろうか。
歪な笑みを浮かべていないだろうか。
そんな帝人の葛藤など、六臂に分かるはずが無く。
「は!」
彼は鼻で嗤うと、帝人を睨み付けながら部屋から出て行ってしまう。
その拍子に帝人の肩に六臂の腕が当たったが、
六臂は帝人を一瞥しただけだった。
帝人はぶつかって痛む腕をさすりながら、
六臂が先ほどまで立っていた場所に膝をつく。
「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
助けることが出来なかった。
もう少し早くあの吸血鬼を殺していれば良かったのだ。
ほんの少しでもあれが改心してくれるのでは、と。
期待を持ってしまったのがいけなかったのだ。
「お前達は好きでこうなったわけではないのにね・・・」
砂となってしまって応えるもののいない部屋で独り、
帝人は泣きそうな顔をしながら十字を切った。