化け物と祓魔師
吸血鬼の王。狼男の王。そして魔女の女王。
この三者が人ならざる者達を統治し統べてきた。
王はその種族の中で最も最強と言われたものが選ばれるという。
最強とは能力だけではない。血筋、天賦の才、人柄。
これらが総合されて最強と言われ、
選定者達はそれらを見抜く力を持つとされている。
そして、王になれば少しだけその容姿も変わる。
吸血鬼は主に目を。狼男は髪を。魔女は容姿を。
吸血鬼の瞳は赤から蒼に。
狼男は茶髪から銀髪に。
魔女はどんな姿でも美女に。
けれど、最も力があるがゆえに王は眠りにつく。
その眠りの間は選定者達が王の代わりをする。
王の次に強いとされる選定者達は眠りにはつかない。
代々その役目を背負い当主が替わっていく。
そうやって化け物達の世界は均衡を保ってきた。
(その均衡を破ったのは人間)
最初は生きる場所を得るために人ならざる者を迫害した。
次に、人が増えたから人ならざる者達から土地を奪った。
そして、今度はただ存在していては恐怖だからという理由で殺している。
(傲慢にも程がある)
帝人は与えられた自室で窓から景色を見つめていた。
時刻は既に深夜で、辺りは暗闇に閉ざされていたが、
所々に光が当てられ、真っ暗というわけではなかった。
しかしその瞳は協会の庭を写してはいない。
帝人は胸に駆けてあるロザリオを握りしめると、
深く深く息を吐いた。
「僕がここにいることが傲慢なのかもしれない」
協会に入ったのは、
いち早く人ならざる者達と接触できると思ったから。
いち早くその情報をつかめると思ったから。
それなのに、未だ誰も救うことが出来ていない。
「本当に六臂の言うとおりだ・・・」
六臂の『偽善者』という単語が耳にこびり付いて離れない。
「六臂・・・」
黒髪の紅玉を持つ純粋な吸血鬼。
六臂を見かけたとき、胸が高鳴ったのを覚えている。
生きていたのだ、と思ってしまった。
あるはずがないのに。
つい、そう思ってしまった心の弱さに辟易する。
「僕の選定者・・・」
たった独り生き残った、吸血鬼の選定者。