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ゴーストQ

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 すると数日後、見慣れない携帯番号から電話がかかってきた。ものすごく嫌な予感がして取るのをためらっていたけれど、最後は根負けしてしまった。はい、と一言喋ったら、女の声がオレの名前を確かめ、水谷のマネージャーをしていることを淀みなく伝えてきた。
「今回番組に出ていただけるということなんですけど」
 あまり期待はしていなかったけど、やはり水谷はオレとの約束をマネージャーさんへ伝えていなかったようだ。そういえばあいつって自分の都合の悪いことだけすぐ忘れる性格をしていた。
「あの、それなんですけど」
「突然ご迷惑をおかけして申し訳ありません、よろしくお願い致します」
 なんだかもうオレで決まって物事が進み始めているようで、今更「いや、できません」とは言い出せなった。断ったとしたら一番困るのは多分この人なのだ。水谷がヘマするならまだしも、オレのせいで第三者に迷惑をかけるのは気が進まない。
「番組のほう、昼の生放送なので、午前いっぱいお時間頂けますか?」
「あ、はい……」
 こんなことしたって相手には見えていないのに、小心者の悲しい癖で、オレは背筋を伸ばして電話をしている。
「当日はこちらで迎えにあがりますのでご心配なく」
 と、いうわけで電話は切れたんだけど、どうも昼の生放送が引っかかる。もしかしてオレはあの番組に……。いやまさかいくら水谷でもそんな無茶なことは……。
 しかし次の日の昼、学食でメシを食いつつテレビを見ていたら、うどんをだらりと垂らしてしまった。友達が何事かと心配してくれたけど、それよりも衝撃的な画面に釘付けられていた。
『芸能人にそっくり友人コンテスト、参加者募集! 芸能人に似ている友達も持つ人を募集しています。我こそはという方は……』
 なにがアルタ前集合だ、ふざけんなよ。
 多分水谷はこれにオレを出そうとしているのだ。嫌だ。なんであのとき断っておかなかったんだろう。ていうか芸能人の水谷が一般人のオレを紹介してどうすんだよ。オレが誰か有名人に似ているなんて、今まで一度も言われたことないんだけど。
 思い出しても腹立たしい。手元のペットボトルを掴む力が強くなる。どうやって断ろうか悩んでいるうちにこうして期日が訪れてしまった。車に乗せられて、一度も訪れたことのない建物に入り、控え室で時を待っているオレはさながらまな板の鯉だ。
「おーっす、このあいだぶり!」
 部屋に入ってくるなり水谷がオレへ明るく声をかける。本当なら怒るか無視したいところだが、後ろにマネージャーさんがいたので我慢した。今オレの顔は絶対引きつっている。

作品名:ゴーストQ 作家名:さはら