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ゴーストQ

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 嫌でたまらなくなったから、学校に着いたらすぐに電話とメールを着信拒否にした。今更どんな希望も与えて欲しくない。
 好きだとか、付き合っているとか、そういう言葉に縋っていたわけじゃない。むしろ当てになどせず、いつも半信半疑で「嫌じゃない」と返していた。なのに今どうしてこんなに辛いんだろう。わからない。考えたくもない。
 水谷はテレビの中にいればいい。別にテレビじゃなくても、雑誌でもどこでもとにかく、あいつのリアリティをオレに与えないところにいて欲しい。
 オレが考えていた最悪の事態は、水谷に犯されることではなく、水谷から裏切られることだった。だからずっとオレは水谷に期待しなかった。高校のときも、今も、極力そうしていた。気を許してからひっくり返されるよりは、何もないまま通り過ぎて欲しかった。
 手が届くと信じかけていたのに、あいつの隣にいてもいいと思いかけていたのに、それが全部幻だったなんてひどすぎる。その気になって心の中に水谷というスペースを作ってしまったぶん、倍返しで辛くなっている。今は後悔しかしていない。
 「好きになるんじゃなかった」って?
 ばかやろう、あんなふうに言い寄られたら誰だって好きになるのが当然だろ。徐々に友達と恋人の境界線をずらされてしまったせいで、『好きでも嫌いでもない』が『好き』へと変化するのは簡単だった。誰かから無条件に好きと受け入れてもらえるのが嬉しくて、性別の壁なんてとっくに越えてしまっていた。
 オレは水谷に固執するようになったのだ。他の女と付き合っていることを知り、激しく憤りを感じているのだ。
 それが嫌で嫌で我慢できなかった。
 全ての授業を終え、部屋に戻るとついさっき着信が一件あったようだった。水谷の名前に、ぐ、と喉が締め付けられる。
 睨んでいたら画面が明るくなり、また同じ名前が映し出されたけれど、普通の着信のように振動はしなかった。電話がかかってきたという履歴だけが残っている。着信拒否にするとこうなるわけか。今まで誰にもそんな措置を取ったことがなかったから少し驚いた。
 気を紛らわせるためにテレビをつけると、夕方のニュースが放映されていた。もしかしたら昼のワイドショーのように芸能コーナーがあるのかもしれない。オレは手当たり次第リモコンを触ってチャンネルを変えたけれど、この時間帯はどこもニュースをやっていて、一番自分に害を与えてこなさそうな番組は相撲中継しかなかったので諦めた。力士は害ではないけれど、これといった慰めでもない。
 机の上に置いていた携帯が光ったと思ったらすぐ消える。多分水谷なんだろう。着信拒否が相手にどう伝わっているのかわからないけど、しつこい。もうそんなことすら知りたくないのに。
 メールが来ていないことを確認したら、携帯の電源を切ってしまった。こうすればきっと諦めてくれるだろうし、オレも無駄にびくびくしなくてもいい。
 携帯をベッドへ投げ、同じようにオレも倒れ込む。枕がまだ二つあるのが変な感じだった。今日の朝はまだ水谷がここにいて一緒に寝ていたのに、今はものすごく遠い。外側にある客用のそれを掴んで下へ落とし、布団もかけずにそのまま目を閉じた。寝たら少しマシになるかもしれない。
 ただ単にオレは自分が嫌なのだった。水谷が他の誰かとあれこれしたことはどうでもいい。それで裏切られたとショックを受け、そこまで水谷へ気持ちを傾けてしまった自分がバカでバカでどこかに埋めて欲しかった。

作品名:ゴーストQ 作家名:さはら