コバラスキマロ
これはやばい。予想していたよりえろい。舌なんて入れたらドン引きされそうで今までやらずにいたけど、こんなに美味しいものが目の前にあったのだ。知らないふり気づかないふりで誤魔化していた自分がバカみたいに思えてくる。
触りたい。とにかく触りたい。だめかな。まだ心の中に咎める気持ちはあったけれど、今までずっと我慢していたし、一度始めちゃったらもう抑えがきかない。
「あっ、手が滑ったー」
どう考えても滑るわけなんてないのに、もしもの保険をかけた自分の声が部屋に響く。びっくりするくらい棒読みだった。オレはその『滑った手』で、栄口が上に着ているもの全部まとめてたくし上げた。
露出された腹と胸に、ごくりと唾を飲み込んでしまう。どれだけ飢えてるんだろう。別に何も変わったことのない、ごく普通の肌色があらわになっただけで、オレは「この格好やらしいよう」とぐるぐる思い続けている。
舐めたい。いやいや、さすがにそれは起きるよな。起きたら栄口って絶対オレのこと蹴っ飛ばすよな。そんでオレは奥の棚にぶつかって、CDやら本やらがバラバラ落ちてきて、超不機嫌な栄口の無言の圧力によって涙目で拾うハメになるんだよな。
でもどうせ蹴られるよな。馬乗りになって寝込みを襲ってるもん。それならボコられるまで思う存分触っていたほうがいい気もがする。そっちのほうが得だ。
そうだよな!
結論は意外と早く出た。ためらいもせずぺとりと腹へ舌を這わすと、栄口の肌がぬるく濡れる。かなりの違和感を与えた気がするけれど、栄口は目を覚まさない。いけるかも。
滑らかな肌をそのまま舐め上げ、あばらまで到達したら、いよいよ理性がどこかへ飛びそうになってしまった。舌先に当たる硬い骨の感じがとても好きだった。
特別に甘い味がするってわけじゃないんだけど、栄口の皮膚は暖かいし、舌を押し返す弾力があって、足の先から頭のてっぺんまで全部食べてしまいたくなる。あああやばい。もっといろんなことがしたい。
だから胸元でぐしゃぐしゃになっている服の下へ冷たい手をもぐり込ませた。すぐに引っ掛かるところを見つけて、指先で強く押すと、とてつもなく悪いことしてるという実感がじわじわと満ちてくる。でも「ここいじったら栄口があんあん言うのかな」って、かなりどうしようもない妄想で罪悪感はきれいに消し飛んだ。
多分言わないと思うけど、オレの妄想の栄口は常に従順で積極的だ。現実と正反対なのは許してほしい。
触ることができたらもっと別のものも欲しくなり、今度は何でもいいから声を聞かせてもらいたくなった。ひとりでやってんのはやっぱ寂しい。寝ているからそれは無理だ。ていうか寝てくれているから好き勝手できるわけで。
こんな暴挙、起きている栄口になんてとてもできないよなぁ。意識がある栄口の乳首を、切羽詰った感じで弄ったりしたら、殴られる叩かれる程度じゃ済まされなくて、変態というレッテルを貼られて一気に絶縁されてしまいそうだ。今のところ無害だからそばに置いてもらえているわけで、オレの真意や本音を知られ、化けの皮を剥がされたら、ここにはきっと居られない。許してもらえない。