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甘ったれと甘やかしと隕石とストレス

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 五回目で重なった瞬間、体勢をいれかえる。驚きで開いた口へ、舌をさしこむ。ふ、と息継ぎのように唇がはなれ、唾液で濡れたくちもとを、そのままなめた。
 口はまだ、閉じられない。
 童顔は、うっとりとした表情でみあげる。
 ――― 馬鹿が。こんなことまで後退してどうすんだあ
 額をやさしく撫でながら、さらに、やさしくしつこく、口をなめつくす。息が、あがっている。
「  す、く  」
「 は。 んな声で呼ぶんじゃねえ。襲うぞ」
 言いながら、唇をやさしく食む。
 ベッドがきしんだ。
 ――― ここまでだあ
 自分に言い聞かせるように、唇をはなす。 息をあげ、見上げる男が、せつなげな声をもらす。
「ばあか。これ以上誘うなよ」
 額に、終わりだというように軽い口付け。
 起き上がり、自分のたちあがった熱をさし、「ぬいてくるぜえ」とそこを後にした。






 ―――― 最悪だった。

「・・・ちくしょお・・」
 まだ暗いうちに、それらを洗濯機にほうりこんできた。せっぱつまったように起きたら、下半身がべたついたものを吐き出していたのだ。
 夢は、もちろん、昨日の銀髪の男のせいだ。
 が、      
       ――― だれだ?あれ?

  顔は思い出せないが、明らかに、スクアーロではない黒いシルエットだった。

 なので、今朝はどういう顔で銀髪に会えばいいのかわからなかった。昨日と違い、ベッドでだらだらと過ごしていたら、ドアが鳴る。
「―― うお゛い、いいかげん起きろお」
「お、起きてるよ」
 がちゃりとドアが開き、銀髪が顔をだす。
「―― なら、飯食え」
「・・うん、」
「おい、」
「うん?」
「・・飯のあと、また、泳ぐか?」
「あ、うん。いいね」
 そうして、またしても深みにはまることを、童顔は考えなかった。



 はじめは、昨日と同じように、銀髪にしがみつき、浮かんでいたのだ。
 そうして、片腕だけになり、腰に腕をまわされ、 ―――― 。
「 も、  やめ、 」
「あん?このまま離していいってことかあ?」
「だめ!・・だけど・・・」
 しっかりと、童顔は両腕で相手にしがみつく。
「『だけど』?」
「っ、  あの・・」
「キス、していいって言っただろ?」
「言った、・・けど・・」
 そうなのだ。
 腰に腕をまわされ、昨日のように楽しく回遊していたら、ふいに近寄った唇が、そっと重なった。
「―― キス、すんぞ」
「っな、なにも、ここで、」
「これだけくっついてんだ。したくもなんぜえ」
「で、でも・・・・あ、」
 腰を支える手が、おかしな具合に動いた。
「ば、ばか!そっちはだめだって!」
「じゃあ、こっちはいいな?」
 言いながら、鼻がぶつかり、そのままなしくずしてきに、了承したことになる。
 そうして、水に浮かびながらの、きりのない口付けがはじまった。
 童顔は早々に力がぬけ、両腕で相手にしがみつく。
 しがみつかれた男は、下でたちあがった熱を何度もすりつけながら、キスを続ける。
 いいかげん、童顔のものも、はりつめている。
「 つなよし 」
 かすれた、静かな声。水着と腰の間に、大きな手がはいりこむ。見上げた相手が、すこし、笑っている。
「ここじゃ、」
「ここがいい。ベッドじゃあ加減できねえぜえ」
「っつ、そ、   ふ、   」
 唇がふさがれ、取り払われた水着がむこうに浮いた。
 そのまま水の中で、両腿をつかまれて、ひらかされる。
「!や、やだ、やだ、みず、はいる」
「・・・そこまで、まだやってねえぜ」
「だって・・・」
「さわるだけだ」
「そ、そんな!」
 にやり、と意地のわるい笑いを返された。
「なんだあ?」
「――― ・・・っど、 」
「聞こえねえなあ」
「べ、ベッドにいきたい!!」
 真っ赤な顔で怒鳴った相手を、銀髪がじっとみつめた。
「ゆっておくが、・・途中でやめる気はねえぞお」
「う、・・最後に、もう一回聞くけど、おれたち、本当に、愛しあってた?」
「 ―――ぐずぐずになるほどな―― 」
「っ、・・・おまえ、顔がいやらしい・・」
「本当かどうか、ベッドで思い出させてやるぜ」
 いやらしい顔のまま、しつこいキスをした。






「・・・・何の、冗談?」
「あ゛あ゛?なにがだあ?」
 振り返った男の手元には、細く小さな注射器があった。


 昨日と同じ流れで、シャワーをあび、食べかすのない童顔の男のベッドに運ばれた。
 ―― と。
 ふいにだされた見覚えあるワイヤーで、あっという間に両手首をベッドサイドに括り付けられ、足首もそろえて縛られた。素っ裸で、びとびとと魚のようにもがき、あばれる童顔を楽しそうに見下ろした銀髪が、鼻で笑った。
「てめえも、ほんとにおめでたいぜえ」
「うるせえ!!とにかくほどけえ!!」
「はん。自分の状況把握してから命令するんだなあ」
「うるせえ!!おれは、――― ・・・おれは?なんだっけ?」
「だからあ、てめえはおれの、セフレだろおが」
「じゃかあしい!!―― ぅうん?なんか、違うような・・・」
「いいから静かにしておけえ。いやでも、これで静かにさせてやるけどなあ」
 細い針先から、なにかの液が飛び出した。
「ぎゃああああ!!なに!?なんで?おれ、おまえになにかしたのか!?」
「・・・・まあ、したっていうかなあ・・・。正直、おれはてめえにあきれた」
「・・・・はああああ???」
 ずい、と男が顔をよせた。
「―― おれは、てめえの現実逃避にちょうどいい相手だっただろ?」
「―――― な、」
「今のおまえになる前、どんくさくて逃げてばっかのどっかの誰かは、てめえの懐に毛色のちがう人間をいれるのだけは、いっちょまえだった。―― 思えば、そのへんがてめえの人生の分岐点だったんだろおぜえ。―― だから、さかのぼったそのへんに、逃げこみやがったんだあ」
「逃げこむ?」
「てめえは無意識でこのおれに甘えてきやがった。記憶がないにもかかわらず、このおれを逃亡の相手に選ぼうとしやがったんだ。まるで、記憶があったときのてめえと同じように、おれなら、てめえの気持ちがわかるだろうとでもいいたげになあ。それとも、『やめちまえ』って言ってやったおれが、逃げ道だとでも思ったか?っけ、冗談じゃねえぜ。自己防衛ってやつか?反吐がでるぜ。てめえはまわりに甘いだけじゃなくて、自分にさえ、クソ甘めえなあ」
「―――」
「どうしたあ?少しは思い出したかあ?・・・・おい、なにも、泣くこと・・・」
「っるせえ!なんだかよくわかんないけど、心のどっかが思い当たるんだよ!それに、おまえが、おれのことそんなふうに思って、あんな優しくしてくれてたのかと思うと、――― 気付かなかった、おれに、腹が立つ・・・」
「―― ・・・いや、だからなあ・・」
「なんだろう?この、自分がすごくいやな感じ。・・・それに、おまえに優しくされて、気持ちよくされて、十何年ぶりかで、夢精した」
「・・・・おう゛い、いちいち報告すんなあ・・・」
「おまえに責任があんだから、聞け。―― でもさあ、夢の中の相手は、お前じゃなかったんだよなあ・・・。なあ、おれってもしかして、違うセフ」
「わかったから、もお黙れ」