ひきこもり
「正臣、いつ引き篭もりやめるの?」
「こっちの台詞」
「何が不満なの?」
「こっちの」
「僕は正臣のこと好きだよ」
「……本気で言って」
「冗談で言えるわけないじゃん」
絶句したような正臣に幼馴染だという理由だけでここまでやったのかと思われて心外だった。
こんなこと好きじゃないと出来ない。
好きだから大変でもやるのだ。
「あ、ぁぁああぁぁあああああああああぁぁ」
野菜炒めをひっくり返しながら正臣は部屋へと走っていく。
途中で鎖に転びかけた。危ないのでしばらくは部屋だけの短い鎖にした方がいいだろう。
「だから、誰に連絡をとりたいの?」
携帯電話に縋りついて泣いている正臣。
アドレス帳は全部消している。
仮に番号を覚えていても電池を抜いているので何処にも連絡など出来ない。
それを分かっているはずなのに抱きつく。
依存症だ。神棚にでも飾ってあげた方がいいのかもしれない。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
謝り続ける正臣の頭を帝人は撫で続ける。
昔に戻ったみたいだ。
野菜炒めがまずいことぐらいで死にそうなほど謝ることはない。