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ひきこもり

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「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

帝人は帝人のふりをする正臣に謝り続けた。
全ては自分が悪いのだ。
自分が悪かったのだ。

「だって、正臣が居なくなるから。正臣が正臣が正臣が」

謝りながらも帝人は正臣をなじる。
泣きながら暗い携帯電話の画面を見る。
ただ淋しかっただけなのだ。
正臣が突然消えてしまって淋しかった。
チャットで存在を確認できて安心したはずなのに淋しさは止まらなかった。
淋しくて淋しくてどうしようもなく淋しかったから帝人は正臣になることにした。
正臣として黄巾賊に連絡をとり、正臣がいるように周りに振るまった。
本当にすぐ傍に正臣がいるような気がした。
そんなことをしたからか正臣はすぐに池袋に戻ってきた。
嬉しかった。
帝人はこれで淋しさも埋まると思った。
勘違いだった。
どうして黄巾賊を使ってこんなことをするのかと帰ってきた正臣は帝人に怒った。
怒られることは分かっていた。
正臣の名前を使って勝手なことをしたのだ。
それでも正臣の顔も見ずに指示に従う黄巾賊がおかしいのではないのか。
自分は悪くないと帝人は思った。
すでにその頃からおかしかったのだと今ならば分かる。
泣きながら謝りながら思い出す。
自分がしたことが何なのか。
ぶつかり合うダラーズと黄巾賊。
潰し合う自作自演の抗争劇。
帝人はそれで構わなかった。
予定通り正臣は戻ってきて目の前の居るのだから何が問題なのか理解出来ない。
理解出来なかったから煩い正臣を部屋に閉じ込めた。
抵抗したり暴れたりすることもなく悲しそうな正臣に帝人は満たされた。
これでもう淋しくない。
その内に杏里も入れてまた三人に戻ろうとそう思った。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

一度火がついた争いは思わぬ方向へ転がった。
街が荒れた。
知り合いたちが傷ついたことに帝人の方が傷ついた。
暴走している黄巾賊を止めるために帝人はずっと正臣を演じた。無理だった。
どうしようもなかったので声をかけてきた臨也に聞いてみたら簡単に教えてくれた。

『紀田正臣を出せば?』
『僕が正臣』
『あー、じゃあそうだね……部屋にいる子の鎖を外せば?』

面倒臭そうな臨也の言葉にそれ以外に方法がない気がして従った。
正臣の足から鎖を外したら逆に帝人の足に鎖がついた。
分からなかった。

『俺が全部終わらせて来るから、お前はそこにいろ』
『嫌、いや、行かないで。正臣っ! いやぁ』
『正臣はお前だろ。……僕がなんとかするから、大丈夫だよ』

毎日のように自分が正臣に言った言葉だと帝人は思い出して背筋が凍った。
それからの日々は地獄だった。
自分が正臣に何をしたのかよく分かる。
同じことを返されたのだ。
モツ煮込み用の内臓に虫をまぶしたり泥だんごを無理矢理口に詰め込んだ。

(ううん。正臣はそんなことしなかった)

泣きながら自分がしたことに帝人はウンザリした。
起き上がるのも嫌だった。
心からの引き篭もりになった。
正臣が帝人のふりを止めたりはしない。
いや、フリではなく狂ってしまったのだ。
ずっと帝人は正臣に正臣として振舞うことを見せつけた。
正臣の存在を蔑ろにして自分が作った虚像に縋っていたのだ。
正臣にも正臣の理由があって何処かへ行ったのだ。



作品名:ひきこもり 作家名:浬@