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ルック・湊(ルク主)

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指輪



なぜか昨日から湊が自分に目を合わせてくれない。
何かしたっけ?と思い返すが、何一つ心当たりがない。
湊独特の、不思議な天然が入った脳内思考にはだいぶ慣れたとは思っていたが、こうあからさまに避けられると、嫌われたのか?とかまさか他に好きな奴が!?などと色々不安になってくる。
そう言えば昨日は僕が魔法兵の訓練をしている間に、詩遠と仲良く過ごしていた。

詩遠。
湊はナナミの事の後もまったくもっていつもと変わらない様子で詩遠を迎えに行った。
あいつはますます湊が気に入った様子だった。
湊の、あのとてつもない強さと明るさは死神には神々しいほどのまぶしさであろう。もし僕が詩遠だったら、きっと自分をとりまく暗闇を照らしてくれる輝かんばかりのあの光はどうしても欲しいと思うだろう。
ただなぜか詩遠は湊に手を出そうとしない。いや、ところどころで何かとやってはくるが、本気で手を出そうとは思っているようには見えない。
なぜだろう。まさか僕がいるからか?あいつにそんな遠慮深い所があるとは思えないんだが・・・。

ルックは石板の前に立って、そういった事を色々と考えていた。
その時ふ、と湊が少し離れたところからルックを見ている事に気づいた。だからルックも湊を見ると、また目をそらされてしまった。

・・・さすがに落ち込むんだけど・・・。
そう思いながらルックはあっという間に湊の目の前に近づいた。
もともと身軽で動きも軽いルックだが、履いているウィングブーツと、はめているスピードリングのおかげで動きはかなり速い。

「っあ。」
「・・・ちょっと・・・いい加減にしてくれる?」
「・・・え?」
「目、合わせないだろ?なんなの?僕、君になにかした?それとも何か隠し事でもしてる訳?」
「っぇっ、な、な、何も、何もしてないっ!!」
「・・・あからさまに怪しいんだけど・・・。」

って、ほんとなんなの。
もしかして本当に好きな奴でも出来たとか?いつだってまっすぐに向けてくれていた視線がこうもそらされる理由なんて、他に浮かばなかった。

「・・・。」
「な、なんでも・・・ないよ・・・?ほんとだよ・・・?」

こういう場合、どういった対応すればいいのか、ルックには分からなかった。情けない事に今まで好きな人なんていなかった為、何を言っていいのかも分からない。
好きな奴がいるならはっきり言えよ、とか、相手は誰だ、とか本当は色々言いたい。だが言えなかった。

「・・・そう・・・。」
「・・・・・・。・・・あの・・・。」

しばらく何かを逡巡しているようだった湊が口を開いた。

「何。」
「・・・あの、ね・・・?その・・・前からはめてる・・・それ・・・。」
「・・・?スピードリング・・・?」
「・・・うん。それって・・・自分で買ったの・・・?それとも貰ったの?」
「??貰ったけど・・・」

それが何か、と言おうとした前に、湊が“ワーン、やっぱりそうなんだ!!ルックのバカーッ”などと言ってバタバタと走り去ってしまった。

「・・・え?」

ルックは湊につい思わず触れようとしていた手を挙げたまま、ポカン、と立ちつくす。
周りでは、“ルックが湊を泣かせたぞ”などという不名誉な言葉があちらこちらから、ぼそぼそと聞こえてくる。
ルックは声が聞こえた方をギロリ、と睨んだ後、何なんだ!?と思いながらも紋章の気配を探った。

だがすぐに探すのをやめた。
だって探してどうする・・・?湊は目も合わせてくれない、しかも意味は分からないが走って逃げられた。
イライラする。むしろいっそ、“嫌いだ”と言われたほうがすっきり・・・いや、それも辛いな・・・。
イライラむしゃくしゃしたルックは、もうその日は石板の前に立つのも放棄して、部屋にこもってしまった。

もし他に好きな奴が出来たとしたら・・・誰だろう。いや、まさか湊が・・・あり得ない・・・。だけれども現に避けられているような気、しかしない。・・・好きな奴・・・。好きな相手が幸せならそれでいい、とよく世間では言ってるよね。
だけど・・・。自分の料簡が狭いという事は自覚している。湊に他に好きな奴が、だなんてとうてい祝福やら応援やら出来る訳ないだろ。しかしもしそうなんだとしたら・・・くそ、いったい誰だ・・・。

・・・詩遠、か・・・?一番可能性としてはありそうだけど。でもやはり湊が他の奴を好きになるとか・・・ありえないような気がする・・・。だがもし詩遠の事が好きになった、なんて言われた日にはくそ、詩遠には葬送の風を・・・いや、あれは80%の割合しかないな、即死・・・。むしろ永遠の風をおみまいしたほうがいいか・・・?
どんどん物騒な方向に考えを巡らせながら、とりあえずお茶を飲み、本を読む。だがやはり、イライラはなくならなかった。

やはり湊を探しに行ってはっきり聞こう、と思った時、ドアにノックがした。とても控えめな、音。
真の紋章の気配がする。
いつもなら、持っている鍵で開けて勝手に入ってくるくせに・・・・・・なんだよ・・・。
黙っていると、もう一度ノックがしたので、ルックは小さくため息をついてドアを開けに行った。

「・・・ルック・・・。」

そこにはやはり湊がいた。なにやら思い詰めたような表情。
・・・ああ。まさか・・・最後通牒なのか・・・?僕は・・・世間で言う、振られる、という経験をするのだろうか・・・?
・・・もうすぐ戦争は終わるだろう。そうすれば、ルックは宿星の役目を終えた事になるので塔に戻る事になる。

・・・もう会う事もなくなるというのだろうか・・・?
ルックは柄にもなく体が震えだしそうだった。
だが・・・せめて戦争が終わるまでは傍に・・・お互い大切な人として傍にいたかった・・・。

「・・・何・・・?」

ルックは絞り出すように声を出した。
・・・息が・・・出来ない・・・。

「あの・・・ね・・・。」

湊は今までそらしてきた目を、今回はしっかり合わせてきた。
・・・そう、か・・・分かった。僕は、君に打ちのめされてあげるよ・・・。
ルックは黙ってテーブルへ湊をいざなった。そして2人とも席に着いた時、湊が口を開いた。

「指輪・・・誰から、貰った、の?」
「??レックナート様だけど・・・?」

覚悟していた訳だが、・・・いったい何の話だ?そういえば石板のところでも湊は指輪について聞いてきていた。

「・・・そ、う・・・。そっか。そうだよね、レックナートさん、綺麗だもの、ね・・・。それに・・・女性だし・・・。」
「・・・は?」

どうしよう、ますますもって意味が分からない。なんていうか、僕の決死の覚悟を返せ、と言いたくなるくらい、意味不明だった。

「あの、さ・・・?湊・・・?意味、分からないんだけど・・・。指輪が何か?」

もしかして、指輪というのは、あげたり貰ったりしてはいけないものなのか?だが、クリスマスプレゼントでルックは湊にスキルリングを贈った。その時はとても喜んでいたと思ったんだが。

「っだって・・・。・・・薬指・・・。」
「・・・は?」

ますます分からない。ルックはため息をついた。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ