ルック・湊(ルク主)
「湊・・・。悪いけど、僕は本気で君が何を言っているのか分からない。まあ僕が何か知らない事でもあるのかもしれない。だから頼むからきちんと順序立てて言ってくれないか?」
「・・・。昨日、詩遠さんが指輪くれたの。」
そう聞くと、ルックはムッとした。ああ、もしかして恋人以外からものを貰うと湊も僕のようにムッとするのか?だからなのか?だが湊がやきもちを妬いているところをそういえば今まで見たことがなかった。
「でね、その時にルックからはもらってないの?って聞かれたから、貰ったって言ったんだ。」
なんでそんな事を聞くのかと思えば、どうやら湊が指に何もつけていないからだそうで。
湊からすれば、いつも手袋をしているし、指輪は身を守る、もしくは利点になる装備品だと思っているので、戦い以外では身につけようと思った事もなかった。
すると詩遠が言ったらしい。
“恋人からもらう指輪は左の薬指につけるものなんだよ?結婚指輪もそうだけれどもね?ある意味、約束と誓いのモノなんだよ?”
と。
そこまで話すと、湊はまた泣きそうな顔になる。
「ルック・・・左の薬指につけてる・・・。」
いや!そんな事言われても!!
ていうか貰った相手、レックナート様!!ちょ、恋人とか、マジやめて!!
ルックはすこし引いた感じになったが、湊の本気で泣きそうな顔にため息をついて口を開いた。
「君、ねぇ・・・。ほんとに・・・。だいたい湊だって、そんな事、知らなかったんだろ?僕だって今初めて知った。この指輪をここにつけてるのはサイズがここが一番合うから、それだけなんだけど。それでも君が嫌なら外すよ。別にこれを外したくらいじゃ、さほど僕の動きが悪くなるわけでもないしね。」
そう言って指輪を外すと、湊はポカン、とした顔になった。それから真っ赤になる。
「ご、ごめんなさい!!僕・・・僕てっきり・・・。そっか・・・そうだよね、そうだよね!!ルックだって知らない事、あるんだもんね!でも・・・良かったぁ・・・。」
そうして最近あまり見る事が出来なかった、ルックが愛して止まないあの笑顔を見せてくれた。
ルックの胸にも暖かいものが広がる。
つい先ほどまでは、この世の終わりのような気分だったのに。
「一応ね、詩遠さんにその話聞いてから、前にルックがくれたスキルリング、ずっとここにつけてるの!!」
えへへ、と湊は左のグローブを外す。左の薬指には確かにルックがあげた指輪がはまっていた。ルックは柄にもなく少し頬が熱くなる。
「っそ、そう。・・・そういえば詩遠から貰ったのは・・・?」
「ああ!憧れの詩遠さんから貰ったのも、ちゃんとつけておこうかなって思って、こっちに!」
今度は右の手袋を外した。すると右の薬指にラッキーリングがはまっていた。
「良い事ありますように、って言って、コレくれたんだー。」
・・・なんとなく、やっぱりおもしろくない。
「でもほんと良かった。ごめんね?あの・・・それでその・・・良かったら今度、僕指輪買いに行くから、その・・・」
ニッコリとしていた湊は、そう言うと真っ赤になりながらどもり出した。
「・・・待ってるよ。」
ルックはふ、とかすかに笑うと、そう言った。
すると湊は目を見開き、また嬉しそうにコクコクと頷いた。
「それまでは指輪、外しておくよ。・・・どうせ普段は僕は後衛でゆっくりさせてもらってるしね。僕に早く働いてほしければ、さっさと買ってくることだね。」
「っもう!ルックのいじわる!!」
そう言いながらも湊は相変わらず嬉しそうに笑っていた。
「それにしてもそんな指輪くらいで他に誰かいるかも、とか疑われるとは、ね。」
「だよねぇ、あはは。なんだろ、つい、ね、ヤキモチ妬いちゃった!」
なん、です、と・・・?
ルックは思わずポカン、とした。
ヤキモチ?あの湊が・・・?
そしてルックはどうしてもニヤけてくる顔をごまかそうと、いきなり頬杖をつき、そしてボソリ、と言った。
「・・・ヤキモチくらい・・・いくらでも妬いたらいいじゃないか・・・。」
すると湊は少しびっくりしたような顔をしたあとで、頬を真っ赤にしながら“うん!”と嬉しそうに頷いていた。
・・・にしても詩遠ってほんと余計な事ばかり知ってるよね、そして余計な事ばかりしてくるよ、まったく。
ルックは嬉しい、そして暖かい気持ちになりながらも、ここにいない某英雄に対して、そっと、だが盛大にため息をついた。
ああ、だけどまあ、疑ってごめん。ルックは内心で、ほんのり棒読み気味にかの英雄に謝った。
とりあえずこれでチャラにしてくれ、と、ルックは次の日、やってきた詩遠に説明もなしにいきなり、外していたスピードリングを“あげるよ”と言って手渡し、とてつもなく不思議そうに首をかしげている英雄を気味悪がらせていた。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ