ルック・湊(ルク主)
「・・・見てたの?」
「んー?何の事やら。まあ、男の子は確かにそうゆうトコ、見せたくないよねー?」
「っ。・・・おもいっきり見てんだろ・・・。」
湊が行ったほうに歩きながら、ルックがムッとして言うと、詩遠は振り返り、ニッコリ笑った。
「まあまあ。ああ、そういえば、湊は周り気にせず笑いたいように笑い、泣きたいように泣く子だよねぇ。」
そこが可愛いよねぇ、と詩遠はルックよりも先を歩きながら言う。
「・・・とりあえず・・・ありが、とう。」
ルックが言いにくそうに礼を言うと、詩遠が本気でびっくりした様子で振り返った。
「あのルックが、お礼!?」
「っちょ、僕をなんだと!」
ルックは少し俯き加減でそう、憤慨したように言った。詩遠はフ、と微笑んでから、また前を向く。
「ねぇねぇ、合戦だろ。勝負、なにか賭けるー?あ、湊とか、どう?」
「ふざけるな。冗談じゃない。」
「えー?じゃあ湊のチューとか。」
「そのどうしようもない頭におもいっきり雪の塊をぶつけてあげるよ。」
2人はとりとめのない事を言い合いながら、始まっているらしい雪合戦に加わった。
そうして湊達は、いい加減風邪をひく!とシュウが怒りにくるまで、散々皆で楽しんだ。
詩遠はビクトール達に、“雪見酒だ!”とかなんとか言われてどこかに連れられていった。ルックに“勝負、俺の勝ちじゃないかな、てことはさっきの件、実行しちゃっていいのかな”とかなんとか言いながら。
「・・・何の事?」
湊がキョトンとしながら、ビクトール達に拉致されていった詩遠を見送りつつルックに聞いた。
「あいつの妄想。関係ないよ。」
「??でもほんと楽しかったね。」
湊はニッコリとルックを見た。
ルックも不本意にもムキになって参加してしまっていた。
「・・・別に。」
「ふふ。僕、昔キャロでもよく雪合戦して遊んだんだよ。ジョウイとナナミと。楽しかったなぁ。ジョウイってばいつもナナミにボロボロにされてた。でね、終わってからすっごく体冷えてたんだけど、ゲンカクじいちゃんがマシュマロ入りの、暖かいココアを用意してくれてて。」
とても懐かしげに湊は言った。たったそれだけしかいない湊の家族。そして親友。今や彼らの内、2人はこの世におらず、1人は自分と敵対する国の王。
だのに湊は笑う。嘘の笑みではなく、本当に懐かしげに、楽しげに笑う。なんて強いんだろう。僕が励ますべきだろうに、僕は君に励まされた。君は知らないだろうけど。
「あ。また降って来たね。」
皆で遊んでいる時に一旦やんでいた雪が、またちらほらと降り注いできた。
2人で黙って空を見上げる。
ルックにも、最早それらはもの寂しいものでもなんでもなくなっていた。
それぞれ、一つ一つ違う結晶・・・。
また何かこみ上げてきそうな気がして、ふと湊を見たら、その光景に溶け込むような、儚げなようでいて強いような、そんな様子で愛おしげに空を見上げていた。その様子はとても美しかった。
「綺麗だねぇ。」
「・・・ああ。そうだね。綺麗だ。」
「だよね!あ、ねえ、ルック!今からハイ・ヨーのとこ行って、ココア作ってもらおうよ!マシュマロ、入れて!」
湊はニッコリと、また楽しそうにルックにそう言った。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ