ルック・湊(ルク主)
「いやだ!いやだよ、ジョウイ。戦争で死んでしまうならまだしも・・・なぜまだ戦わないといけないの!?僕は戦わない!君に殺されたって、戦わないからね!!」
「・・・湊・・・なぜ・・・なぜ君は・・・。僕はハイランドの皇王で・・・そして同盟軍と戦い・・・多くの君の仲間を死に追いやった・・・そして・・・ナナミも・・・。君は・・・君の仲間の為に戦わなくちゃいけない。多くの人々の為に・・・。」
「っ違う!僕は・・・僕らはああ、ハイランドと戦ったさ!でもそれはハイランドと戦ったのであって、君と戦ったんじゃない!ルカの時は、僕は国と、という気持ちはなくて、ルカ個人を実は対象にしてた・・・。でも・・・色々あって・・・僕は負けない、と誓った。でもそれは君に、じゃない!戦争にだ!!そりゃ・・・戦争だもの・・・君と対決する覚悟すら、イヤだけど・・・一応・・・したよ?でも戦争は終わった。それに・・・、それを言うなら僕だって君の仲間を死に追いやった!!たくさんの人々をっ・・・。それに・・・ナナミは・・・。」
「・・・湊・・・僕は、君がうらやましかった。そうやって・・・どこまでも優しくなれる君が・・・。でも僕が君達を裏切ったのも・・・その優しさに嫉妬したのかもしれない。君は多くの人に愛されてきたんだ・・・。だからこそ・・・。」
そこまで言うと、ジョウイは棍を落とした。そしてガクリ、と膝をも落とす。湊はそこに駆け寄った。
「ジョウイ!!」
「・・・力を・・・使いすぎた・・・。ルカ・ブライトの・・・ひらこうとした・・・獣の紋章・・・。それを押しとどめる為には・・・この“黒き刃の紋章”を使わなくてはならなかった・・・。・・・二つの紋章は・・・一つで真の姿となる・・・しかし・・・一つ限りで・・・力を使う事は・・・命を・・・削る事に・・・なる・・・。多分・・・君も気づいている、よね・・・?君だって・・・多分かなり・・・。だから・・・このままじゃ、僕達の命は・・・ともに尽きる・・・。・・・この紋章を・・・一つの姿に・・・君に・・・僕の命を・・・渡す・・・。右手を・・・、湊・・・。」
「いやだっ!僕は・・・僕はそんな為にここに来たんじゃないっ!戦う為でも君から命を奪う為でもない!僕は君に会う為に来たんだ!!ジョウイ・・・きっと、きっと他にも方法はあるよ!!きっと助かる方法は・・・。ね?だから・・・。」
「・・・湊・・・僕は・・・君が、大好きだったよ・・・そして、それは今も同じ・・・。だから、どうかお願いだ・・・。僕の想いを・・・。そしてどうか・・・僕らが望んだ平和を・・・いい国を・・・。・・・酷い事を言ってるのは・・・分かってる・・・でも・・・ほんとに・・・僕は・・・もう・・・。」
「ジョウイっ。いやだ・・・いかないで・・・おねが・・・」
「泣かないで・・・。最後には・・・君の笑顔が・・・」
ボロボロと涙を落とす湊は、それでも必死に笑顔になろうとした。
ジョウイはそれをみて、静かに笑い、そして瞳をとじた。
湊の全身に水が行きわたるように力がみなぎって来る。右手が熱い。そしてそのまま、湊は瞬きもせずその場に固まった。
もう、その琥珀色の、ルックがいつも綺麗だと思っていた瞳は、何も映してはいなかった。
「っ!」
「・・・どうした?ルック?」
「・・・紋章が・・・・・・一つに・・・。」
「・・・。・・・湊は・・・?」
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ