ルック・湊(ルク主)
心声
ずいぶん元気を取り戻した湊だが、飲食もせず、動きもしなかった数日で体の方がなんとなく弱弱しくなってしまっていた。
食事はとりあえずおかゆから始めたが、今はもう元通りしっかりと食べているようではあるが。
「ずいぶん細くなっちゃったね。もともと細いのにそれじゃあ折れちゃいそうだよ?」
湊の部屋でお茶をしている時に詩遠が言った。ちなみに詩遠もルックもお茶だけだが、湊はしっかりケーキも食べている。
「・・・言わないで、詩遠さん・・・。でも!これからいっぱい食べて、僕はビクトールさんを目指すよ!」
優しく詩遠に言われると、湊はフォークを咥えたまま少し俯いたが、次の瞬間にはニッコリと力強く、ビクトールの名前を出した。
「・・・それはまた極端な・・・。」
「言わせておいてあげなよ。あんたは知らないだろうけど、前に浴衣着た時か・・・」
「ちょ!ルック!!」
「?」
「・・・着た時から言ってる事だから。この子、細すぎて帯、腰で巻けなかったんだよ。」
「へえ?」
「ルック!バカ!わざわざ言わなくてもいいじゃん!!バカバカ!!」
「ふん。この僕を心配させた罰だよ。この僕を心配させるなんて、10年早いんだよ子猿。」
「子猿じゃないもん!僕だってもう、16歳にはなってるんだからね!・・・多分?」
「あやしいもんだね。」
ルックが横目でそう言うと、湊はおもいっきり膨れ面をした。
そんな光景を詩遠は楽しげに見る。
湊がああなった時は生きた心地がしなかった。まるで自分が改めて闇に落ちた気分だった。
この子がまた元気をとりもどすなら俺は何だってする、そう思った。
ルックのおかげで、てのが少し妬けるけど、でも本当に良かった。
こんなやりとりがまた出来るようになるなんて、いないと思っていた神に感謝してもいいかもしれない。・・・それにしても、本当に強い子だと思う。ルックじゃないけど、俺も尊敬する。
湊はあの後、起きて動けるようになったとたんシュウのところへ行き、デュナンのリーダーとなる事を承諾しに行った。ルックに“本当にやるのかい?”と聞かれた時は、笑顔で“それがジョウイとの約束だから”と答えていた。
俺は周りから未だに英雄視されているが、本当の英雄はこの子だと思う。
俺は・・・弱い。そして、この子の強い光に引き寄せられているちっぽけな存在でしかない、と改めて思う。
「詩遠さん。」
「・・・あ、ごめん。ん?何?」
「あの・・・。詩遠さんが協力するっていって下さった戦いは、おかげさまで終わりました。本当にありがとうございました。ちゃんとお礼、まだ言ってなかった。」
「え、そんなの、いらないよ?」
「ううん。で、ですね。」
「うん?」
「・・・これからも・・・良かったら、えっとたまにででいいので協力、してもらえたら嬉しいなぁって、その、思って・・・。」
「なんだ、そんな事?もちろん、いいよ?俺は出来うる限りの協力はする。いつもトランやデュナンにいる訳じゃないだろうけど、それでもいつだって心は君の傍にいるからね?」
「わぁ!ありがとうございます!!」
ニッコリときざなセリフを吐く詩遠と、それをどうとってるのか知らないが、あの可愛らしい笑顔を見せて喜ぶ湊を、ルックは面白くなさげに見る。
「そういやルック。お前はこれからどうすんの?」
「・・・ああ。もうしばらくはここに残るけど・・・その後は魔術師の島に戻る。」
「へぇ?そうなんだ?」
すると湊がまた膨れたような顔をして言った。
「そうなんですよー。ほんとはね、ずっとそばにいてて欲しかったけど・・・。でもルックはルックでしないといけない事あるだろうから・・・仕方ないんですけどね。」
「する事って、どうせ小間使いだろう?」
「ちょっと。相変わらず失礼だなアンタは!・・・でも、・・・きっと今、あそこはすさまじい事になってるんだろうな・・・。」
「「っうっわー・・・。」」
少し遠い目になったルックを、湊と詩遠は痛々しい目で見た。
「が、がんばってね!ルック。僕もたまに手伝いに行くから!」
「何言ってんだよ、君はここで仕事に専念してなよ。・・・僕がたまに来るから・・・。」
ルックがプイ、と関係ないところを見ながら言った。湊はそれを見て、“えへへ”とニッコリ笑顔になる。
「そうそう、お前はあの島にこもってなよ。その間俺が湊とそれはそれは仲良くなっておいてあげるから。それでたまに俺がその報告にそっちに行ってやるよ?」
「いらないよ!ていうか変な事したらズタズタに切り裂いてあげるからね!」
「またまたー遠慮しちゃって。」
「遠慮の訳ないだろ!?」
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ