ルック・湊(ルク主)
仲間
「とりあえず2階に寝かせた。」
「ルックは?」
「あの子の様子をみてるよ。今日はもう、ここに泊まっていったらいいよ。」
詩遠が腐れ縁とシーナに言った。
「ああ、悪いな。」
「いや。あの子は・・・リーダー、と言ってたね、あのルカを倒した子、かい?」
「ああ。」
「そう。で?今までも倒れたりしていたのか?」
「いや、ああ、今まではそんな事は多分なかったとは思うんだが、この間、ルカを倒した後で倒れた。」
「ふーん。・・・とりあえず、お前たちはくつろいてたらいいよ。俺はちょっと様子を見てくる。」
そう言って、詩遠は2階に上がった。
ガチャリ、とドアを開けると、ルックが湊の手を握りながらキスをしているところだった。
「おっと。失礼。」
「・・・そう思うなら出ていけば。」
しばらくして顔をあげたルックがジロリ、と詩遠を見て言った。詩遠はニッコリと笑って椅子をもう一つ持ってきてベッドを挟んで、ルックの向かい側になるように座った。
「ふふ、ほんと相変わらずだね。で?今のは何。」
「・・・あんたともあろう者が、キスを知らない訳ないだろ?」
「まあ、ね。でも今のは違うんだろ?まさかルックが気絶して倒れてる子の唇を奪うとも思えないし、ね。」
相変わらずニッコリと詩遠が言う。
「ふん・・・。別に・・・たいした事じゃないよ。」
「へぇ。・・・紋章に関係あるのかな?お前、あのモンスターと戦っていた時の反応がおかしかったものね。」
「・・・」
「この子、アレでしょ、真の紋章、宿してるんじゃないの?今の天魁星なんでしょ?ああ、でも確か、同盟軍のリーダーはゲンカクの息子だって話聞いた事があるよ。という事は、宿しているのは『輝く盾の紋章』、かな?過去のゲンカクのように。」
詩遠はルックを見て微笑みながら話し出す。
「という事は、真の紋章でありながら不完全な状態の紋章、てことだね?それと、関係、あるんじゃないの?」
「っあんたも相変わらずだね。飄々としてるくせに、ほんと嫌になるくらい洞察してくる。」
「お褒めいただき、ありがとう。」
「褒めてない。ムカツクって言ってんの。・・・。・・・不完全な紋章のせいで・・・この紋章の力を使う度に、これは宿主の命で力を補っている・・・。」
「・・・酷いな。」
「まあ、ね・・・。僕に出来る事は、僕の目の届く範囲ではなるべく紋章の力を使わせない、という事と、あとは消耗した時に、“気”を送るくらいだから。」
「ああ、なるほど。・・・ふふ、じゃあむしろ、ちゃんとした房中術のほうがいいんじゃないのか?」
「そんな事まで知ってるあんたが気持ち悪いよ。別に、キスでも送る事は出来る。」
「じゃあ、代わりに俺が・・・」
「今ここに湊が眠っていなければ、速攻切り裂いているところだからね。・・・まったく。とりあえず、この子も、そして僕も大丈夫だから。」
ジロリ、と詩遠をにらんだあと、ルックがため息をついて言った。詩遠は、そう、とだけ言ってにっこりと笑った。
ほんとにあなどれない。どこまでも人の事を読みとって。湊の事を想って気が気じゃない状態ではあったが、普通絶対外見からは分からないはずなのに。
「あんたになぐさめられるのは更に気持ち悪いからやめてくれない?」
「あら、ひどい。なんだったら身体でなぐさめてあげてもいいよ?」
「余計に気持ち悪い。」
「ククク、だろうな。俺もお前とはする気にはなれないよ、そんなに女顔なのにね?・・・こっちの、えっと、湊?この子ならいける、いや、むしろお願いします、だな。」
「出ていって。」
ルックがそう言うと、詩遠はまたニッコリと笑って、“もう少ししたら夕食だから、お前も食べにくるように、でないとその子、襲うからね?”などと言い残して部屋から出ていった。
ルックはため息をついた後、湊の手をとり、手の甲にそっとくちづけをしてから自分の胸にその手を抱きこんだ。
翌日には湊は元気になっていた。
「ありがとうね、ルック。看病、してくれたんでしょ?」
「別に、それくらい・・・。」
「あ、俺も一瞬だけ、したよ?」
起きた湊がルックにしゃべっているところに、詩遠がまたノックなしで入ってきた。
「君には『ノックをする』という概念はないのか?」
「えー、まぁ、普通はするけどさ、なんていうかな、良い感じな雰囲気になってたら面白いのになぁとか思って、ね?」
「最低だね!」
ニッコリと言ってきた詩遠にルックは突っ込む。
「ほんとですか!看病、ありがとうございます!」
あれ?湊、今のやりとり、色々スルー、してない?
ルックは一瞬思った。それに、今の詩遠はどう転んでも憧れの英雄でもなんでもない発言しかしてないというのに、相変わらず頬を赤らめてキラキラしながら詩遠を見ている湊が理解できない。
「あ、良かったらお礼はくちび・・・」
「切り裂・・・「静かなる湖」」
ルックが風魔法の呪文を唱えようとしたとたん、水魔法の呪文を唱えられ、魔法を封じられてしまった。自分は魔導士だというのに、あっさりと封じられるのが忌々しい。
「だめだろ、ルック。ここは俺の家。潰す気?あ、それにまだ湊も病み上がりでしょ?」
湊はついで、か!ていうか既にもう呼び捨てか!などとルックは内心で色々突っ込みつつ、詩遠をにらんだ。
そんなルックを無視してニッコリと微笑みながら、詩遠はベッドに近づいた。
「元気になって、良かったね。あ、ねえ、湊。僕は戦争には更々加わる気はないけど、良かったら手伝いくらいなら、君の為にさせてもらいたいな。」
肝心な戦いには加わるつもりない、と笑顔で言いきっているというのに、なぜか殺し文句に聞こえるのはもはや詩遠の技だとルックは思った。
「え、いいんですか!?わあ、嬉しいです、ありがとうございます!!」
そんなセリフに、湊は有頂天で答えていた。
「良かった。じゃあ、よろしくね?あ、朝食の準備が出来たから。湊も起き上がれるようなら、ルックと一緒に食べにおいでね?俺は先に行ってるよ?」
そう言って、詩遠はまたニッコリと笑って手をあげ、部屋から出ていった。
「はあー、やっぱかっこいいね、マクドールさんって。」
湊が頬を赤らめつつ、ルックに言った。
「・・・どこが・・・。湊って、けっこう人を見てる方だと思ってたけど、案外見えてないんじゃない・・・?もしかして未だにアレを優しくておだやかな、笑顔の素敵な英雄、だとか思ってる?」
ルックが呆れたように言った。いや、少しはヤキモチも混じっていたのかもしれないが。
「・・・え?」
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ