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ルック・湊(ルク主)

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そしてあの男はとりあえず地下の牢屋に入れられている。手続きが整い次第、男の出身地へ送られ、それなりの裁きを受けて貰う事になるだろう。
事情を知っている周りでは、軍主である湊にとんでもない事をしたのだから、こちらで処刑するべきだとの意見も出たが、被害者である湊が、表ざたにする事なく男のやってきた国に任せたい、と言った為の対応となった。
ルックもどう思っているかは神のみぞ知る、だが、何も言わず従った。
男はやはり今までそんな事件などは起した事はなかった。大人しく、かなり植物の知識が豊富な、まじめな青年だったらしい。

「人って、怖いねぇ。なんかの拍子に変わっちゃうんだね・・・。」

湊が言っていたが、ルックからすれば、そういう風に変えてしまうような湊の持つ何かの方がある意味よっぽど怖いと思った。
そして湊はとりあえずは色んな意味で自由の身になった。
それでもやはりじゅうぶんに気をつけろ、とあらゆる人から言われつつ、今日はようやく一人で花屋まで来た。店をたたんでいた花屋は、湊に気づくと中断して近づいてきた。

「湊様。」
「花屋さん、ありがとう!ごめんね、ちゃんとお礼、言ってないままで。」
「いえ、とんでもない。少しでもお役に立てたのなら良かったです。」
「すっごい役に立ったよ!花屋さんってすごい人だったんだねえ。」
「ふふ。・・・気味悪くないのですか?」

ふと、少し微笑んだ後で花屋が湊に聞いてきた。

「花屋さんが?とんでもない。そんな訳、ないよー。なんで?」

湊が不思議そうに聞くと、花屋は少しだけまた微笑んだ。

「ああ、変わった魔法みたいなん使うから?でもそう言うなら、僕の仲間たちって、皆変わってるしねー。それに、花屋さんが草花と会話みたく意思、通じ合えるように、動物と意思、通じ合える人もいるんだよ?バドって言うんだけどね。それに過程は全然違うけど、移動魔法なら、使える人、ルックの他にもビッキーていう女の子だって出来るしねー?」

湊は至極当たり前、といった風にたくさん喋ってきた。
花屋が何者なのか、なぜここにいたのか、など何も聞いてこない。

「ありがとうございます。お会いできて、良かったです。」
「・・・そか。もうお店もお終いだものね。行ってしまうの?仲間には・・・。」
「ふふ。私は108星ではありませんので。」
「!?知ってるの?108星というもの。それとっ・・・あの・・・もう、会えないの?」
「・・・そうですね。ずいぶん昔に別の天魁星に出会った事があるんですよ。・・・湊様。私はそれで少し懐かしくて、つい吸い寄せられるように来てしまいました。ただ、昔馴染みとそっくりな方がおられたので、念の為に顔や見た目、話し方などを少し偽っています。それでもいつか・・・あなたがこの戦争を終えられたのち・・・いつか、また私が助けになるのなら、今度は偽りのない姿でお伺いしますね。」
そう言って、今までにないような笑顔でニッコリと花屋は言った。
「ほんとに?うん、絶対だよ!名前、聞いても、いい?」
「ええ。キリル、といいます。」
「・・・湊。」

そこにルックがやってきた。

「あ。ルック。」
「またそうやって一人で行動する。君には学習するという能力はないわけ?行くよ。なんだかどうしても軍主に会いたい、という山賊少年がいるらしい。」
「あ、うん、分かった。ごめんって、ルック。じゃあ、ね、キリルさん!ほんとにありがとう!絶対、だからね!」

湊はニッコリと笑って手を振り、店を出る。ルックはチラリ、と花屋を見たが何も言わず、黙礼だけして湊の後をついて行った。

「ええ・・・また。・・・あなたが無事、生き残っておられたら・・・。」

キリルと名乗った青年はそう呟くとあと少し残っていた作業を終えた。
軍師への挨拶は済ませてあるし・・・軍主であるあの少年とも最後に話せて良かった。そう思ってから目を閉じ、手で自分を払うようなそぶりをすると、先ほどよりもずっと若々しい顔つきへと変わった。そして、そのままその場から消え失せた。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ