二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ルック・湊(ルク主)

INDEX|92ページ/174ページ|

次のページ前のページ
 

決意1



ティントに向かう山道で、コウユウの仲間に会った。どうやらアジトをゾンビに攻め込まれ、なんとか逃げてきたらしい。その間に仲間の一人、ロウエンという名前の、コウユウの姉貴分が行方不明になってしまったとのこと。心配しつつも、とりあえず湊らはティント市に協力を申し入れに行った。
ティント市は鉱山の街で、街の雰囲気も、そして街人の雰囲気も荒っぽいイメージがした。

さっそく市長に面会を申し入れると、今までかたくなに同盟軍への援助を拒否してきたにしては存外あっさりと通された。
市長と聞くからには知的なイメージが先行するが、さすがはティント。市長までもが鉱山の男、という風体と口調だった。
とりあえず湊は真摯に話をした。こういう時の湊はいつもの感じとは違い、しっかりとした口調でさすがはあの同盟軍の軍主、と思わせるものがある。たいていの者は心を動かされる。
だがそんな湊に返ってきた市長、グスタフの言葉は相も変わらず荒かった。

「おまえさんがあの同盟軍の軍主だと?そんな細っこいなりで女の子みたいな様子で。よくまあ成り立っているな。」

ルックと詩遠は、『あーあ。』と思った。
普段湊は特に自分の容姿に対しては無頓着である。いや、むしろもうちょっと頓着しろよ、と突っ込みたい勢いなくらいだ。
女の子のようだと言われても別に気にした様子もなく淡々と、『いや、男だよ』と素で返してくるくらいだ。
だが。

こうやって立派に軍主を務めあげているにも関わらず、いまだになぜか劣等感がぬぐいきれてない湊は、軍主として何か言われると、それに対してとてつもなく気にする。
それが仕事面の事を言われたなら色々真摯にとらえたり思い悩んだりするようだが、自分の見た目に絡められるとカチンと来る何かがあるのか、とたん、導火線に火がつくのか、ルック曰く“いい性格”が出てくるようなのである。
現に今、2人はチラリ、と湊をうかがうと、なんともいえない笑みを浮かべているところだった。

「怒っているね、あれは。」
「ああ、間違いなく、怒っているだろうね?」

2人はボソリ、と囁き合った。
その間もグスタフは話を続けていた。
一応湊の話も聞いていたらしく、それとともにゾンビに襲われつつある現状を踏まえ、話を進めていくうちに、だんだんと真摯な態度となり、自ら同盟軍に協力を要請してきた。

「湊殿。我らティントに力を貸して下さらぬか?」

結局そんな態度と口調で頼んでくるなら、あんな事、言わなければいいのに、と2人は思った。

「・・・バカだね。」
「うん、バカ。」

そう言いながら、やはり2人はチラリ、と湊を見た。湊はニッコリとして口を開いた。

「嫌です。」
「ちょ、おまっ、え、何言ってんだぁ?おい、湊。俺ら何しに来たと!?」

ビクトールが驚いたように、焦ったように湊に言った。そんなビクトールの様子をスルーし、湊は相変わらず笑顔のまま、またもや、嫌だと言ってのけた。
ビクトールがルックと詩遠に『お前ら、なんとか言ってくれよ』とボソリと言ってきた。

「そんなん知るかぃ。俺は外交に関しては部外者。」
「あのガサツな市長が悪いんだろ。最初から普通に要請してくればいいものを。」

それに対して詩遠とルックは答えた。暗に“ムリ”と言っている。
普段の可愛さはどこへやら、一度いい性格になった湊を止めるのはルックでも難しい。湊がその気にならない限り、無理だからだ。
グスタフを見れば、あきらかにオロオロと青くなりながら困っている様子。
その時、コウユウが湊に、『お願いだから』と泣きついた。
すると、湊は我に返ったようにコウユウを見る。それからため息をついてグスタフに向き合った。

「・・・分かりました。コウユウが困ってるみたいだしね。それにこちらとしても、そちらの援助は今後必要なんです。今回の件もそちらの要請がなくともどうにかしたいとは思っていましたし。協力、します。」

湊がはっきりとそう言うと、グスタフと、ついでにビクトールも目に見えてホッとしているようであった。

「ただ、言っておくけど。グスタフさん。今後一切僕の容姿と軍主の仕事を絡めないでね。僕がどう見えようと、女の子みたいであろうと、そんな事はあなたに関係ない。もし軍主として何か至らないことがあれば、その時はもちろん、はっきりと言って下さい。それを守ってくれるなら、僕は喜んで協力するよ。」

ニッコリと笑って、湊はグスタフに手を差し出した。

「ええ、それは、もう!申し訳なかった。俺の考えがいたらなすぎました。あなたは立派な軍主です。もちろん、今後とも惜しみない武力や協力をお約束します。」

グスタフはそれはもう嬉しそうに、むしろいい歳をして頬を赤らめつつ力強くそう宣言し、湊の手をしっかりと握った。

「なんていうか、手なづけるの、うまいよね?」
「・・・。」

色んな意味をこめてニッコリと、詩遠が湊とグスタフを見ながらルックに言った。ルックは無言だったが。
そしてグスタフの片腕らしい、日弱そうな青年、マルロに案内され、その日は長旅の疲れを取ることになった。

「って、なんで俺がルックと寝ないといけない訳?」
「それはこっちのセリフ。あんたなんかと同室とか、ありえないね。」
「おいおい、いい加減にしろよ、2人とも。なんだったら俺かコウユウでもいいぜ。」
「「・・・。」」

2人とも、ビクトールのいびきのうるささは解放戦争時に嫌というほど知っていた。そして2人とも、まったく知らない者(この場合コウユウを差す)と一緒に眠れるほどの心の広さは持ち合わせていない。
本当だったならどちらも湊との同室が良かったが、そうなると片方がナナミとの同室になってしまう。それは熊や他人との同室よりはマシだとは思ったが、湊がそれを許さなかった。

「女の子と同室で、いい訳、ないよね?」

それはそれはニッコリとして言ってきた湊の表情を思うと、2人とも何も言えなくなる。
湊はナナミに関してはある意味鬼にもなれるようであった。
ナナミと一緒の部屋に入っていった湊を見ながら、ルックが呟く。

「・・・最近、あの子、あんたに似てきたんじゃないの・・・?」
「・・・うーん、どうだろうね?」

そうして2人はため息をつきながら渋々同じ部屋に入っていった。

「・・・襲わないでよ。」
「俺をなんだと?少なくともお前を襲うくらいならナナミちゃんにしとくよ。」
「・・・それ、湊の前で言ってごらんよ・・・。」
「遠慮します。」
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ