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ルック・湊(ルク主)

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決意2



「おはよう、ルック!ぐっすり、眠れた?あ、詩遠さんも。おはようございます、よく眠れました?」

翌朝、湊がニッコリと声をかけてきた。やはり(ナナミをのぞいて)一番に声をかけてくれるのを内心喜びながら、ルックは詩遠を見ながら言う。

「おはよ。・・・まあ、ね。こいつは死んだように眠るし。」
「おはよう、湊。死んだように、とは何気に失礼だね、ルッくん。光栄に思いなよ、俺がぐっすり眠るのは安心してる証拠なんだし?」
「別に嬉しくともなんともないね。それよりあのうつ伏せ寝をどうにかしてくれない?不気味で仕方がない。」
「そんなもん、ぐっすり寝てる俺がどうにか出来るかい。ほんと失礼。」
「あはは、ほんと仲、いいなー。て、詩遠さん、うつ伏せ寝が多いんだ?」

2人のやり取りを楽しそうに見ながら湊が言うと、その2人に、“仲良しは余計だ”との無言の圧力を受けた。そしてその後で詩遠がニッコリと口を開く。

「まあ、これから一緒に眠るようになると俺のくせもよく分かるようになるよ、湊。」
「そんな日が来ると思わないで欲しいね。」

それに対してルックが答え、そしてニッコリとどす黒い笑顔で見つめ合う2人。

「もう、2人とも、ほんとに。あ、ちょっとね、聞きたいんだけど。」
「「何?」」
「・・・うん。えっと、ナナミってさ、最近、ちょっと大人しくない?」
「ナナミちゃん?」
「そう?僕は分からないけど・・・。」
「そか。うん、だったらいいんだ。」

ニヘラ、と笑った湊を、2人はいぶかしんだように見たが、その後別の話をしだした湊を追及する事はしなかった。
それからビクトールに、リドリーとクラウスが到着したという話を聞いて、皆はグスタフの部屋に行った。そこでしばらく話をしていると、到底グスタフの娘とは思えない小さな可愛らしい少女が入ってき、オバケが来ていると言ってきた。
皆で街の入り口まで出てみると、ゾンビを引き連れたネクロードがいた。

「おはよう、皆さん。今日は天気も麗しく、私も最高の気分ですよ。」
「やっぱりお前か!ネクロード」

ビクトールが前に出て言った。ネクロードがこちらを見る。

「おやおや、これはこれは、あなたもしつこい人だ。」
「てめぇ、なんだって王国軍に力を貸してやがる!」
「力を貸す?王国軍??いえいえ、そんなものとは関係ありません。ただ私はこんな山間に素敵な私だけの王国をつくれれば良いなと考えているだけですよ。と言う訳でグスタフ殿、市民諸君、あなた達は出ていって下さい。もちろん、死者になれば私の王国に残れますがね。・・・まあ、死者にならずとも、手に入れてもいいと思える方はいらっしゃるようですが。」

ネクロードはチラリ、とこちら側を見た。湊はなぜか悪寒がし、そっとルックの後ろに隠れる。グスタフが口を開いた。

「我がティント市を死者の王国にするなど許せるものか!!」
「話の分からない人ですねぇ。あまり我が死者の王国の人口を増やしたくないのですが、強情をはるのでは仕方ありません。正面から戦いにて攻めとりましょう。」

そう言ってネクロードは高笑いした。ゾンビが街から出ようとしだす。ビクトールが言った。

「待ちやがれっ。」

だがゾンビが歩いて出ていくのをしり目にネクロードは姿をそのまま消し去ってしまった。

「おのれぇ!!おい!お前らぁ!!やつらを生きて帰すな!!いや、もう死んでるのか・・・。どっちでも良い!!ギタギタにしてやるぞ!!!」

グスタフが息巻いていると、周りの男どもも“ゾンビなんかに負けるかよ!”と勇んで叫んでいた。ルックと詩遠はと言えば、『相変わらず気持ち悪い事しか考えないね』と呟いていた。
その後グスタフの家に戻り、対策について話し合っていると、男が2人入ってきた。湊はなにげに振り向くとかすかに目を見開く。そんな湊に気づいてルックと詩遠も振り向いたが、見た事もない男だった。その男の一人、事務職風のなりをしているがどこか自尊心の高そうな青年が口を開いた。

「これは何事ですか、グスタフ殿!」
「おお、戻られたか。ジェス殿にハウザー殿。いかがでしたか?兵士達は集められましたか?」
「グリンヒルとミューズから逃げのびてきた市兵たち、志を持つ市民たちを含めてほぼ5000程の兵士を集める事に成功した。しかし、報告の為に戻ってみればいつの間にか湊たちがここに居座っている。これはどういう事ですか。」
「湊殿は同盟軍のリーダーとして我らティントとともに戦って下さると約束してくれた。」
「何をおっしゃいます!同盟軍ですと!!皆だまされています!」
「なんだと!ジェス!それはどういう意味だ!!」

湊が困ったような顔を、ナナミがムッとした顔をしている中、ビクトールが息巻いて前に出てきた。ルックと詩遠は状況がいまいち分からず、とりあえず様子をうかがっている感じである。
するとジェスと呼ばれた青年が湊の前に立つ。

「こいつは都市同盟の人間じゃない!!我々をこんな目に合わせたハイランドの回し者だ!!同盟軍のリーダーだなんて、何を企んでいるか、分かったものか!!」

その瞬間、湊とナナミがなんとも言えない表情をした。そしてルックと詩遠の周りの空気が凍りついたものに変わった。だが湊がそっと首を振る。仕方なく2人はこらえた。

「てめぇ、ジェス!!何を証拠にそんな事を言ってる!!湊がどういう目に合ってきたかも知らないで!!」

ビクトールが怒りに堪えない様子で言った。するとようやく口が利けたかのようにナナミが絞り出すように言った。

「そ、そ、そうだよぉ・・・・・わたし達だって、別に好きで・・・」

そんなナナミの様子など無視したようにジェスがビクトールに言った。

「証拠だと。ああ、証拠ならあるさ。俺は見たんだ!!ミューズが落ちたあの時、こいつは市長アナベル様の殺された部屋にいたんだ!!こいつこそがアナベル様を、その手にかけたんだ!!」

そして当時の様子を話す。部屋に入ると血まみれで倒れていたアナベルと、その傍らでアナベルに触れていた湊とナナミ。ジェスが『何をした、説明しろ!』と言っても黙っているだけ。そして人を呼びに行った隙に、湊とナナミはどこかに消えていた。

「バカ言うんじゃねぇ・・・そんな訳あるか!!湊がアナベルを・・・」

アナベルと親しかったビクトールは思い出したのか、どこか痛むような表情をする。

「湊!!言い訳出来るか?」
「・・・・・・。」

ジェスに問いかけられた湊は青ざめた表情のまま黙っていた。だが頭はずっとあげたままジェスから顔はそらさなかった。

「っほ、ほらみろ、言い訳すら出来ない!」

その時今までだまっていたリドリーがジェスの傍らにやってきた。そして威厳に満ちた様子で口を開いた。

「ジェス殿。トゥーリバーの将軍として言わせてもらう。それ以上我らがリーダーを侮辱する事は許しませんぞ。」
「ふん・・・・・・。失礼する・・・・・・。」

そしてその間ずっと黙っていたもう一人の黒人の軍人風の男、ハウザーとともに出ていった。
少しの沈黙の後、湊が口を開いた。

「・・・続けようか。」
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ