二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

ルック・湊(ルク主)

INDEX|95ページ/174ページ|

次のページ前のページ
 

決意3



「起きなさい、湊・・・。」

声が聞こえた。目を覚まし起き上がると光が現れ、そして目の前にはレックナートがいた。
ナナミは?とベッドを見ると彼女はいなかった。

「湊、久しぶりね・・・。ずいぶんとたくましく・・・そして、悲しい瞳になったみたいね・・・。わたしの瞳に映る未来は移ろいやすく、時に我が手をすり抜けようとします。」

湊はぼんやりと聞いていた。ナナミは・・・?ナナミはどこにいったんだろう・・・。最近様子がおかしいと思っていたけれど・・・。

「あなたの右手に宿った“輝く盾の紋章”はジョウイの持つ“黒き刃の紋章”と呼び合っています。それは、運命の交わり・・・。それは苦しい道になるでしょう・・・」

でも、そういえば・・・僕がルックの事、好きかどうかはっきり気づく前から、たまに何か言いたそうにしていた・・・。ふと、レストランでいつぞやにお茶を飲んでいた時の事が思いだされた。

「しかし湊。あなたには、多くの運命、想いが集まっています。それを忘れないで下さい。」

はっと我に返った時には、レックナートは消えていた。
ごめんなさい、ちゃんと、話、聞いてなかった・・・でも今はナナミの方が気になる。今日だって、元気そうにしてはいたけど・・・。
湊はそのまま部屋を出た。どこかにいるだろうか、ときょろきょろしていたら、ナナミが廊下の奥の片隅でぼんやりと立っているのに気付いた。

「ナナミ・・・。どうしたの?風邪、ひくよ?」
「寝てなかったの?湊。」

少しびっくりしたようにナナミが言った。そして少し目を閉じてから湊を見た。

「・・・・・・。静かだね。夜ってこんなに静かだったんだね。このところ・・・戦いが多かったから・・・。」
「・・・ん。」

そして少しまた沈黙した後、ナナミが言った。

「ねえ、ジェスさんの言った事・・・どう思う?わたし達って、どこの人間なんだろうね・・・。ハイランドでは、みんな良くしてくれたけど、どこかよそよそしかった・・・。あの頃は不思議でしょうがなかったけど、今なら理由は分かる・・・気がする。ゲンカクじいちゃんが都市同盟の英雄だったなんて今でも信じられないけどね・・・。」

そして少しだけニコリ、とした。湊が黙っているとナナミは続けた。

「そしてハイランドを追われて都市同盟に来て・・・。でもやっぱり、わたし達は都市同盟の人間でもないし・・・。・・・ねぇ・・・湊。」
「・・・ん?」
「・・・・・・や、やっぱりいいや・・・。」

いつかのように否定した後、ナナミは俯き、そして顔をあげた。

「いや、やっぱり言っちゃおう・・・。湊・・・・もうこんな戦いなんかやめようよ・・・。湊が戦わなきゃいけない理由なんかないよ・・・。戦って、傷ついて、武器を振るって、人を殺めて、そんな事をする理由はないよ。」
「ナナミ・・・。」
「どうして?どうして湊なの?もっとふさわしい人がいるじゃない!ビクトールさんや、フリックさんや、シュウさんや、リドリー将軍や、フリードさんや・・・。」
「・・・。」
「湊が戦う必要なんかないよ・・・。このままじゃ、このままじゃ、湊とジョウイは・・・・・・」

肩を震わすナナミに、湊はなんと言っていいのか分からなかった。

「・・・僕は・・・必要とされているから・・・。」
「でも、でも、でも、湊じゃなきゃいけないの?湊もわたしも、ただの子供だよ。こんな戦いがなかったら、湊とジョウイも少年兵の兵役を終えて、あのグリンヒルの学校みたいな所に行って・・・。明日、死ぬかもしれない、なんて心配なんかしなくても良くて・・・」

ぐっ、とナナミは声を詰まらせ俯いた。湊はナナミの肩をそっと持つ。

「もうやだよ。やだよ、やだよ、やだよ!湊が死んじゃったらどうするの??ゲンカクじいちゃんもいない。ジョウイもいない。それなのに、それなのに・・・。」
「・・・そうだね。」

するとナナミはパッと顔をあげた。

「ね、ね、ね、湊・・・。どっか・・・どっかさぁ、遠い、遠いところ、ハイランドでも都市同盟でもない、聞いた事ないところまで逃げようよ。なんとかなるよ。いや、お姉ちゃんが、なんとかしてみせるから、どっか静かなところで暮らそうよ。・・・ほとぼりが冷めたらさ・・・ジョウイも連れ戻してさ・・・・・・暮らそう、よ・・・。昔みたいに・・・。じいちゃんがいた頃みたいに・・・。湊とジョウイが・・・」

どこかうつろな目で、そして自分が涙を流しているのも分かっていないように、ナナミが笑顔で言う。
そんな・・・そんな顔は見たくなかった。

ずっと。
ずっと、小さかった湊は、ゲンカク、ナナミ、そしてジョウイの為だけに生きてきた。それまでどれほど辛かったとしても、ゲンカクに拾われ、湊は生まれ変わった。大切な家族が出来、そしてその人達の為に生きてきた。
今いつも楽しそうに笑っている湊だが、拾われた頃は笑うどころか、ほぼ表情というものがなかった。そんな湊が今のようになれたのは、すべて大切な家族のおかげ。湊に笑うという事を教えてくれた、またとない、かけがえのない人たち。
そしてゲンカクは亡くなり。そしてジョウイは・・・。それでもナナミだけの為でもいい、そう思っていた。大切な、大切な姉。
もちろん大切な人はたくさん出来た。いつも優しく暖かく楽しい皆。
そして大事な、大好きなルック・・・。

だけれども。
皆、ごめんなさい。
僕は。
作品名:ルック・湊(ルク主) 作家名:かなみ