SOUVENIR II 郷愁の星
◆4
やすらぎの力を星に送ろうとして、クラヴィスはふと後ろから来たランディのほうを見た。
「すまなかったな、ランディ。おまえには何も告げずに来てしまった。だが、おかげで日中は有意義にこの星を見回ることができた」
見回る? ランディはその言葉に反応した。聖地でも滅多に出歩かないクラヴィスが?
「どういうことなんですか、クラヴィス様」
「何が」
「いくら力を与えるためとはいえ、ここまでいらっしゃること自体不思議だったけど、何でこの星……」言いかけてランディは思い出す。
「この星が“特別”ってどういうことですか?」
さっきジュリアスとクラヴィスが言い合っていた。お互い何か含んだような物言いで。
「それは」
クラヴィスが言おうとしたとき、後ろから物音がした。ランディが振り返ると、上からすっぽりとクラヴィスのマントを被って、リディアを抱きかかえたジュリアスが立っていた。
「本当は立ち会っていたいのだが、とりあえず連れて帰る。出入口の者には言付けておく」
クラヴィスは頷くと、ランディのほうを見た。
「おまえももう帰るがいい。私はまだもう少しここにいる」
「……わかりました、ですが」
「おまえの力のことは明日にしよう」クラヴィスはランディの心を見透かすように答えると、ジュリアスの抱きかかえたリディアを見た。
「私がこの娘から話を聞く」
ジュリアスの表情は一気に険しくなった。だが、クラヴィスは何も言わず、ふい、と再び広がる黒い土地の直中に向かって行った。そしてジュリアスも背を向ける。仕方なくランディもジュリアスの横を歩いた。
「あの」
「何だ」
「聞いてもいいですか、ジュリアス様」
返事がないので、ランディはそのまま続けた。
「何故この星なのですか」クラヴィスから聞けなかった答えを、ランディはジュリアスに尋ねた。
ジュリアスは、くいっと今までいた方へ顎をしゃくった。
「あの者から聞いたのではなかったか、ここの話を」
「え?」
「そなたに、何故私が剣を持たなくなったかという話をしたと言っていたが」
作品名:SOUVENIR II 郷愁の星 作家名:飛空都市の八月