朱金の王花
またしてもロイは言葉を失った。だがこの間が抜けた、礼を欠いた反応を大総統は咎めなかった。
「鋼の錬金術師はこの先で消えた」
目を瞠るロイに、大総統は促した。前へ進むようにと。
「君一人の方が出てくるかもしれん。行きたまえ」
「…はい」
わけはわからなかったが、ロイは言われるままに前に進んだ。すなわち、回廊の先にあるはずの花園へ。
エドワードを連れ戻すことは決めていたが、この展開は予想にないものだった。大総統に正面からたてつくことにならなかったのは良かったのかもしれないが、事態としてはそちらの方がわかりやすかっただろう。
しかし、進むしかない。ロイは顎を引いて足を進め、背中に大総統の視線を感じながら、とうとうかつて迷い込んだ場所へと踏み入れた。花園は、記憶にあるのと同じように、堅牢な鉄の柱に覆われていた。