二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

朱金の王花

INDEX|4ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

「牡丹の花びらが、私の服についていたんだよ。…大総統府に牡丹なんて咲いていないのに」
「…その牢獄みてーな場所には咲いてたのか?」
 エドワードの問いに、ロイは黙って頷いた。
 なんだかぞっとしない話だった。
「なんとなし、気になってね。あの場所はなんだったんだろう、と今でも思ってるんだ。なんだってあのひとはあんな場所にいたんだろうか、とね」
「それで、オレが似てるから気になったって?」
 ロイは少し考えた後、そういうことになるかな、と曖昧な返事をした。
「なんだそれ、はっきりしねえな」
「鋼のは、御伽噺には興味がないか」
「は?」
 ロイの話はまた飛んだ。だが、彼の表情は何かを考え込んでいるような、複雑なものだったので過剰な反論は避ける。
「よくわかんねえ。興味がないっつうか、あんまり知らねえかも」
 正直に答えたら、普段ならからかってきそうな男が探るような目を向けてこんなことを口にした。
「アメストリス建国の神話」
「賢者の話?」
「いや、それじゃない。もっと昔の話」
「もっと昔…?」
 腕組みして唸るエドワードを詰るでもなく、ロイは静かに口を開いた。
「アメストリスの始まりに花あり。天、その美しさを惜しみて手折らず。ゆえに我、アメストリス、朱の花もて王花となす。しからば天、我を滅ぼさず」
 エドワードは瞬きした。聞いたこともない。
 首を傾げた少年から正確に彼の知識を読み取ったのだろう、ロイは頬杖をといて顔をエドワードに向けた。
「私も忘れていた。もしもあの時見かけた花が牡丹でさえなかったら、思い出さなかったかもしれない」
「牡丹がなんなんだよ」
 ロイは椅子から立ち上がり、ゆっくりとエドワードに近づいてきた。
「知らないなら、知らないままでいい」
 こちらの肩に手を置いて、ロイは子供を諭す口調で言った。エドワードは目を吊り上げる。こういうのは、性に合わない。
 こういうのも、合わないのだ。子ども扱いされて蚊帳の外に置かれるような、そんな気遣いなんて。
「ガキ扱いすんな!」
 エドワードはロイの手を払いのけて、ぎっと睨みつけた後、音がしそうな程強く背中を向けた。そのまま荒々しくドアを開いて、鋼の、という困ったような声に顔だけ後ろを向く。そして、言い捨てた。
「大佐がオレを馬鹿にしてるのは、よくわかった。もう聞かねえよ」
 ロイが目を瞠ったのを見た気もするが、そのまま駆け出してしまったので、実際はどうだったのかなんてエドワードは知らない。
作品名:朱金の王花 作家名:スサ