A cielo che avvolge una nube
4.
「・・・最近、キミの周りが煩くなってきたね」
「・・・どっちの意味で?」
「ん? 両方だよ。 まぁ・・・彼らに関しては、現状では観察・・・かな。
キミに害があると判断したら、容赦しないけど」
とある一室。
微睡から目覚めた少年は、自身の髪を優しく撫でる少女を見上げ、ポツリと呟いた。
そんな少年の言葉に、少女は少しだけ考えるそぶりを見せると苦笑いを浮かべながら原因と思われる2つを想像する。
そんな彼女の思考を読んでいるのか、普段は決して見せない甘えを出しながら少女の柔らかい腰を抱きしめ、自身の信念にも似た誓いに則った行動を示唆するのだった・・・・・・。
穏やかな日常。
最近は騒動の中心に巻き込まれる形で関わっていた少女ではあるが、本来の気質は温和である。
大空のように全てを抱擁する彼女は最も愛する雲と共に、一時のシエスタを楽しむ。
再び、騒動に巻き込まれる・・・その時まで。
――――― 勘違いと妄想から繰り広げられる喜劇。
喜劇とは別に、《Firmament(大空)》を守るため、《Nuvola(雲)》は暗躍する。
いつもの通学路。
この日も晴天に恵まれ、つかず離れず雲が程良く漂っている。
そんな中、一際目立つ少女がいた。
犬の散歩に出かける主婦や出勤途中のサラリーマンが驚きと僅かな不快感を滲ませる視線を向ける先には、塀を平均台のように震えながら歩く少女の姿があった。
少女は周りを気にすることなく目的地までたどり着くと、自己紹介を始めた。
「こんにちはー。 私、三浦ハルと申します!」
「知ってるゾ。 よく、学校に行く時に付いてくるよな。 今日は、なんだ?」
ツナには目もくれずリボーンのみを見つめる少女・・・ハルは彼に存在を知ってもらえていたことを喜びニコニコと上機嫌だ。
リボーンの問いかけに、意識が飛んでいたハルはハッとした表情を見せ、自身の目的を告げる。
「あの、私とお友達になってくれませんか?」
「いいゾ」
「ほ、ホントに!? い、いやったー!!!」
決心した様子で告げる内容にツナは既に傍観者として僅かに距離を置き、静かに眺めている。
そんな中、ハルは嬉しさのあまりに倒れこむように塀から落ちた・・・が、自身の運動神経を活かして綺麗に着地する。
(・・・あの子、新体操でも入ったらどうかしら)
「あ、あの・・・!! 早速ですが・・・こう、ぎゅーっとさせてもらえませんか?」
「・・・気易く触るな」
高いテンションのまま、塀から降りたことで漸く視線を合わせたハルは、自身を抱きしめる仕草を見せながら期待に満ちた目をリボーンに向けた。
そんなハルに対しリボーンが出した返答は・・・銃に変化させたレオンを突き付けるものであった。
「・・・え?」
「俺は、ヒットマンだからな」
キョトンとしたハルに対し、リボーンは淡々と告げる。
その様子に普段のフェミストぶりを知るツナは、呆れた視線を向けその場を立ち去ろうとした。
――― バシッ
「・・・何のつもりかしら」
「最低です! 赤ちゃんに、こんな言葉を覚えさせるなんて!!
赤ちゃんというのは、純粋無垢な心を持った天使なんですよ!?
そんな純情な心を、貴女はその腐ったハートでデストロイですか!?」
(・・・何がどうして、そっちに思考が行くのかしら。 むしろ、その“赤ちゃん”が二足歩行&完璧な会話をするはずがないじゃない)
「わははは! ランボさん、とうじょう! リボーン・・・かくごぉ!!」
振り上げられた手を寸前で止めたツナは、不機嫌な顔を隠さずに呟いた。
そんな彼女に対し、ハルは目の前の少女=原因と決めつけ、一方的に攻め立てる。
そんな彼女に、表情は崩さないものの内心では呆れ果てたツナは、溜息を吐いた。
その時、頭上から居候することとなった幼児の声が聞こえ・・・・自滅した。
「うっく・・・・。 が・・・ま・・・・ん・・・・」
「ありゃりゃ・・・。 大丈夫? 僕・・・。 ・・・よく見ると、微妙にキュートですぅぅぅ!!」
「く、くるちぃ・・・。 が・・・ま・・・ん・・・」
「あっ・・・。 ・・・この続きは、後でキッチリさせていただきます!」
自滅したランボに慌てた様子を見せたハルは、素早く駆け寄ると急いで抱き上げ・・・涙目のランボを至近距離で見て、我を忘れてきつく抱き締めた。
その抱擁に、本来ならば嬉しいはずのランボもあまりの苦しさに再び泣きかけ、意識が遠のく。
ハルの視界から外れたツナは、相変わらずのランボに対して苦笑いを浮かべながらもこれ幸いとばかりに学校へ向かうのだった。
クラスでは、先日行われたテストの答案が返されている。
ツナは、自身の計算通りの赤点以上平均点よりやや下の点数に内心では満足げに頷き、周りを見渡す。
自身の点数を見て、項垂れる者や喜びを見せる者など・・・様々だ。
「ツナちゃん、どうだった?」
「んー・・・。 いつも通り、可もなく不可もなく・・・かな」
「アンタ、いっつもニアミスとかするからよ。 それさえ無くせば、もう少しいい点取れると思うよ?」
「あはは・・・。 気をつけて入るんだけどね」
隣の席である京子に聞かれたツナは、苦笑いを浮かべながらいつもと変わらないと告げると、京子と同じく彼女の点数を知る花が会話に加わる。
その横で獄寺が何かを告げたそうな表情を浮かべるが、ツナはあくまで気付かないふりをしながら彼女たちとの会話を続けた。
「ねぇ、この後・・・何か用事あるかな?」
「え? 私はないけど・・・」
「うん。 私も大丈夫だよ?」
何かを考える仕草を見せた京子は、親友2人にこれからの予定を聞く。
花は京子の言葉に驚き、ツナは雲雀との予定を思い出しながら大丈夫だと頷く。
雲雀は本日、テスト終了の解放感からハメを外す草食動物(生徒たち)の取り締まりに忙しいのだ。
「だったら、放課後今回の復習しない? 私も間違えたところあるし・・・。
ツナちゃんのニアミス対策もできるかもしれないよ」
「あぁ、それいいわね。 場所は・・・沢田、アンタの家でもいいかしら。
距離的には、ちょうど真ん中あたりだし」
「別に大丈夫だけど・・・。 うち、今居候が3人いるから・・・それでもいい?
気になるようなら、部屋には来させないようにするけど」
「居候が3人も? ・・・元の住人より多いじゃない」
「・・・父方の都合・・・・かな。
母様は、大好きな料理が振る舞えるって大喜びしているけど」
2人の返答にニコッと微笑みを浮かべ、提案した。
その提案を名案とばかりに頷き、家の位置からツナの家が一番良いと判断する。
普通ならば、図書室と選択するだろうが、下校時間以降に校舎にいる並盛生徒はいない。
また、群れと認識される人数であるため、自殺行為以外なにもない。
これを理由に、街中にあるカフェも選択肢から外れるのだ。
花の言葉にコテンッと首を傾げたツナは彼女の嫌いな幼児が2名(1名は疑問だが)いることに考慮するが、花は気付かない。
そんな彼女に苦笑いを浮かべながらも了承するツナであった。
2人を連れ帰宅したツナは先に2人を部屋に通し、飲み物を取りにキッチンへ向かう。
作品名:A cielo che avvolge una nube 作家名:遠野 真澄