A cielo che avvolge una nube
「・・・やっぱり、彼気づいていたんだね。 前々から、只者じゃないとは思っていたけど。 って、リボーン。
「獄寺隼人」知っているの?」
交換条件を告げる雲雀に、リボーンは呆れにも似た苦笑いを浮かべると、調べてほしい内容を告げる。
その名は、彼が溺愛する婚約者のクラスメートであることを把握している者であった。
同じく、クラスメートであるツナも首を傾げていたが、リボーンの言葉に納得とばかりに頷いた。
「知っているぞ。 「獄寺隼人」は、現役のマフィアだぞ。
武器は、全身に仕込んでいるダイナマイトで、異名は“人間爆撃機『ハリケーン・ボム隼人』”だぞ」
「・・・いきなり私に殺気を飛ばしてきたと思ったら・・・・。 ・・・リボーン、守護者に関しては、私に一存するんじゃなかったの?」
「最終的な判断はな。 だが、候補はいるぞ。 そいつらと顔合わせをして、後はお前の直感で判断しろ。
ちなみに、「獄寺隼人」は俺が調べた結果、血筋は完全に?世の守護者の血を受け継いでいるぞ」
驚いた様子のツナにニヒルな笑みを浮かべたリボーンは、イタリアにいた頃に調べた内容をツナに告げる。
そんな彼に、自身の知りたかった情報を得られてすっきり顔なツナだったが、今朝の会話を思い出したのか、少々不満そうな表情を浮かべた。
そんなツナにも動じることなく、リボーンは淡々と彼らに共通する《血筋》を告げるのだった・・・・・・。
放課後まで応接室で雲雀の手伝いをしていたツナは、廊下をすれ違う体育教員やクラスメートの同情的な視線を気にすることなく、教室に戻ると帰り仕度を行った。
「・・・沢田ツナ、話がある。 ちょっと、来てもらおうか」
「・・・えッ!? わ、私!?」
教室を出ようとした矢先、それまで睨み続けていた獄寺がツナに声をかけ、彼女の言葉を聞くことなくその華奢な身体を引きづって行った・・・・・・。
「・・・ダメツナ、あの転校生になんかやらかしたのか?」
「ちょっと! なんでダメツナなのよ!! あんな、地味な子ッ!」
茫然とその様子を見送ったクラスメートたちはしばらく硬直していたが、ポツリと呟かれた言葉に意識が戻ったのか、主に女子生徒たちが悔しそうに既に姿の見えないツナを睨み続けるのだった・・・・・・。
ツナが引きづられるように連れてこられたのは、人気のない様々な意味での「呼び出し」に最適な“校舎裏”であった。
辺りは球技大会後もあってか、部活動は休部ということもあって、グランドから活発な野球部やサッカー部に精を出す部活生たちの声が聞こえない。
そんな静寂が辺りを包む中、ツナはオドオドとした態度で獄寺の様子を窺っていた。
「な、なに? 獄寺くん・・・」
「俺は、お前みたいな女がボンゴレの次期?代目になることを、認めない。
お前みたいなやつを?代目にしちまったら、歴史ある・・格式のあるボンゴレもお終いだ」
「!?」
「・・・目障りだ。 果てろ!!」
怯えた表情で獄寺を見つめていたツナに何を思ったのか、苛立った表情を見せた獄寺は、初対面に向けた視線以上に殺気をツナに浴びせた。
カタカタと震えるツナに対し、獄寺は制服に隠し持っていたダイナマイトを見せると、すぐさま引火させようとツナに迫った。
「思ったより、早かったな」
「リボーン!」
緊迫した中、幼児特有である高めのボーイソプラノで呟いたのは、木の中に隠れていたリボーンであった。
そんなリボーンに内心呆れたツナだったが、長年の猫かぶりは伊達じゃなく、ある意味でポーカーフェイスとなっている表情で叫んだ。
「『獄寺隼人』」
「リボーン、知ってるの!?」
「会うのは初めてだがな。 俺がイタリアから呼んだ、ファミリーの一員だぞ」
「って、マフィアなの!? 獄寺くん・・・」
昼間に応接室で聞いた内容だが、“一般人”であるツナがその事実を知るはずがない。
ツナがなぜ、今のような状態を続けているのかを悟っているリボーンは、ツナたちの策略に則って言葉を続けた。
「アンタが、?代目が最も信頼するヒットマン・リボーンか。 噂は聞いてるぜ。
こいつを殺れば、俺が?代目内定というのは・・・本当だろうな」
「あぁ、本当だぞ」
「って、リボーン! 何勝手に約束しているのよッ!!」
胡散臭そうにリボーンを睨みながらも、ここに呼ばれた際に告げられた内容を確認した獄寺に対し、その内容を初めて知るツナは素で驚きの声を上げた。
既に臨戦態勢に入っていた獄寺の手には引火済みのダイナマイトが握られており、ツナは驚きながらも慌てて走り出した。
走る速度的には遅いものの、着地地点から僅かに逸れて逃げるツナに対し、焦れた獄寺は攻撃の手を休めない。
追いかけっこは校舎裏を一周する勢いだったが、目の前が校舎となった時に速度を落としてしまったツナは、後方から迫る獄寺から逃げる術がなかった。
「沢田? なに、してんだ?」
「や、山本くん!? 来ちゃだめッ!!!」
ツナたちに近づいてきたのは、クラスメートでもありリボーンが雲雀に素性依頼をした山本武本人であった。
山本は好青年的な爽やかな笑みを浮かべながらツナに近づこうとしたが、危険を理解していない彼に対しツナは慌てて叫んだ。
「事態を収束させろよ、ツナ」
リボーンは肩に乗せていたカメレオンのレオンを銃に変えると、ツナに向かって発砲した。
弾丸となった光はツナの額に命中し、不安定な態勢だったツナの額に、淡いオレンジの炎が灯された。
「・・・そんなモノに頼ってないで、直接かかってきたら? それとも、ソレがないと・・・碌に戦えないのかしら?」
炎を灯したツナは、今まで見せたことのないほどの冷徹な笑みを浮かべ、自身に向かってきたダイナマイトを美しい脚力で作りだした風圧で全てを消し去った。
「クソッ!! 2倍ボム!!」
「・・・だから、効かないってば」
ツナの足技に舌打ちをした獄寺は、先ほどの倍のダイナマイトを取り出し、ツナに向けて放つ。
そんな彼に深い溜息を吐いたツナは、制服のポケットから取り出した扇子を広げると力を込め、淡い光を全体に包みこませる。
その間もダイナマイトがツナをめがけて飛んでくるが、ツナは至って冷静に見つめ、光が集束した扇子を徐に横一線に引いた。
その瞬間、軽く引いたにも拘らず強風と思えるほどの風が吹き荒れ、一瞬のうちに全ての炎が消え去った。
獄寺はそんな状況にギリッと奥歯を噛み締め、ツナはそんな彼に対して無表情で見つめた。
「ッ!! 3倍ボム!!」
獄寺はその腕に抱えられるだけのダイナマイトを瞬時に出したが、点火させた瞬間、抱えるので精いっぱいだった彼の腕からコロコロとダイナマイトが彼の足元に転がり落ちた。
導火線は通常よりも短い。
獄寺はその様子に茫然と佇み、逃げる様子を見せなかった。
「・・・La fine di me・・・(・・・ジ・エンド・オブ・俺・・・)」
「・・・自身が扱えないモノは、時として・・・その身を破滅へと導くものよ。 これに懲りたら、精々精進することね。 ・・・『風の舞』」
ツナはその場で型を取ると、舞姫のように軽やかに舞った。
作品名:A cielo che avvolge una nube 作家名:遠野 真澄