銀魂集(一般)
色香に猛獣(神高)
「俺ァ、てめえなんか呼んでねェよ。」
よく利用している小舟の窓の桟に腰掛け、三味線を弾いていた高杉がおもむろに言った。
「あれえ、僕がいること、分かった?」
「ろくでもねェ気配がギラギラしてやがるからな。」
スッとどこからか船の外側に神威が姿を現す。
そして高杉の座っている横を通りぬけ、船内の部屋に入った。
「入れなんて言ってねェ。」
「まあまあそう言わず。ていうかギラギラした気配だなんて、ひどいなぁ。」
相変わらず得体のしれない笑顔で神威は言いつつ、畳の上に座った。
「何の用だ。」
「ん?特に用はないよ、仕事の事を言っているなら。」
「なら帰れ。」
「うーん、あいかわらずゾクゾクくるくらいそっけないね。仕事の帰りだよ、お兄さんっ。」
「この変態野郎が。・・・いつものゴツイ奴はどうした。」
窓に腰掛けたまま冷たい目で高杉は神威を見る。
そんな視線にゾクゾクとしながらも神威は、ん?と変わらずニッコリ首をかしげる。
「ああ、阿伏兎のこと?船で待機してる。」
「・・・いないのか・・・。奴がいつもは防波堤になってくれてやがるのにな。」
高杉がボソリ、とつぶやいた。
「もう、いくら阿伏兎とはいえ、あなたの口から他の男の話は聞きたくないな。ただでさえあなたはモテるからね。僕、妬けちゃうよ?」
口調は変わらず優しげでさえあるのに、今の神威の表情は、見る者が見たら震えあがるような様子だっただろう。
だが高杉はそんな神威をもろともせず、フン、と鼻で笑った。
「何が妬ける、だ。本気になった事もねェガキが生言うな。」
「おや、心外だねぇ。なぜ僕が本気じゃない、と?そんな事、いつもそれこそ本気でとらえないあなたが分かる訳、ないんじゃないの?」
「フ・・・。だったら俺を本気にさせてみせろよ。」
そう返してきた時の高杉の顔といったら!!
神威はゴクリ、と唾をのむ。
ほんといつもゾクゾクとさせてくれる。
ああ、この妖艶な様子。
いっそ真っ赤な血で飾りつけたい。きっとそれはそれは美しいことだろう。
痛めつけたい、そしてもっと、と哀願させてやりたい。
いや、この人は哀願はしないだろう。
きっとこちらをも傷つけようとそれはそれは美しい勢いで歯むかってくるだろう。
そんな様子を想像しただけで堪らなくなる。
大好きだよ?晋助さん・・・何もかも喰らいたい勢いで。
骨までもしゃぶりつきたい勢いで。
そしてモテるあなたは気にくわないな。
そんなあなたを罰する前に、まずは周りをうろつく輩を皆殺しにしようか・・・。