二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
みっふー♪
みっふー♪
novelistID. 21864
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

おじちゃんと子供たちのための不条理バイエル

INDEX|4ページ/22ページ|

次のページ前のページ
 
兄がポイしたメモ帳を慌てて拾ってボクっ子が訊ねた。
「なんで? にーちゃんなんでダメなん?」
満面の笑みを作って兄は言った。
「おまえは本当にトンチキさんだな、肝心の兄妹ドンブリデーが抜けてるじゃないか」
「あっそっか!」
凡ミスに気付いたボクっ子がおだんご頭を掻きむしった。「……じゃあじゃあっ、コレでどう?」
斜線で消して余白に書き直したそれを兄に見せる。
「……えーっと、月/兄、火/ドンブリ、水/妹、木/メガネ、金/兄、土/ドンブリ、日/妹&ゆーえんち、」
「却下!」
座りっぱから急に立ち上がったので血行が悪くて痺れた方の足を引き摺りつつ、眼鏡っ子がメモを奪い取った。
「……ったくマ夕゛オさんの負担も考えなよ、ドンブリは週二日もいらないだろっ」
もっともなことを述べつつ眼鏡っ子が書き上げたスケジュールは、
「――月/メガネ、火/兄、水/妹、木/兄、金/妹、土/メガネ、日/ドンブリ、」
「何か文句ある?」
すちゃ!と眼鏡の位置を質して問うた眼鏡の態度は、常になく自信と威厳に満ちていた。
「ゆーえんち!」
妹が拳を突き上げてシュプレヒコールした。
「……ふぅん、」
押し付けられたメモを手におさげにーちゃんが言った。
「君って案外控えめなんだね」
こんなんで満足できるわけ、さすがダテに地味キャラ名乗ってないや、にーちゃんはおさげを揺らしてけらけら笑っ――ねーねーゆーえんち! 妹が兄のセーラー服の袖を力任せに引っ張った。兄は無言でポケットから取り出した小箱を放った。妹は飛んで行った。
「……わかってないのはそっちの方さ、」
眼鏡少年は俯いたままほくそ笑んだ。――連中バカめ、まんまと作戦に引っかかりやがった、中四日空けることでマ夕゛オさんは新鮮な気持ちでボクと会うことができる、キミたちに連日兄妹コンボ食らってやっとボクでほっとした翌日にとどめの兄妹ドンブリじゃマ夕゛オさんが耐え切れずに胸やけ起こすのも時間の問題さっ、
「……こいつ全部声になってやがるアル、」
箱を拾ってツーステップに戻って来た妹が肩を竦めた。兄の目がギラリと光った。兄は手の中のメモ帳を握り潰した。
「――イチから設定のやり直しだ」
「なっ、そんなの勝手じゃないか! 先に無茶な設定ふっかけてきたのソッチだろ!」
途中でメンドくなったのか、だいぶいろいろグダグダにはなってたけど、ここまでさんざ人付き合わせておいてなんて自己本位なやり方なんだ、眼鏡少年は憤慨した。
にーちゃんはかったるそーにおさげの毛先を引っ張って述べた。
「大体さー、くたびれたアラフォーおやじ取り合って毛色の違うじょしこーせー二人がガチバトり合うってのが無理があるってかおやじドリームくさいと思ってたんだよねー」
にーちゃんが転がっているおじさんに冷たい一瞥をくれた。
「いやっ、俺そこナンも関わってないよっ?」
――これこれこーゆーテイで、って有無を言わさずキミから企画持ち込まれただけでっ、おじさんは起き上がって必死に弁解した。
「アンタは黙ってなよ」
にーちゃんが笑顔で一蹴した。
「にーちゃんかっこいー!」
妹がほくほく顔で開封した小箱からすこんぶ一枚進呈した。さんきゅーでぃーっす、チャラ口調でニヒルに兄は受け取った。
「……。」
おじさんはすごすご引き下がった。――チクショウなんてヤツだ、眼鏡少年は重ねて憤りを露わにした。兄と妹はすこんぶ食み食み独善会議を始めた。
「……やっぱー、セオリー通り俺はおじさんの義理の息子で、メガネっちはおじさんが捨てた息子で、そんでオマエは俺の生き別れの……」
「だから何のセオリーだよっ! いっぺん言おうと思ってたけど、なんでボクばっかいっつもマ夕゛オさんに――」
「ぱっつんうるさーい、」
アルアル妹が言った。メモ取ってるんだからちょぉ静かにしてー、ほぉらすこんぶあげるからぁー、
「いらんわ!」
眼鏡少年は三つ編みうぃっぐをブン投げ、口角泡を飛ばしてブチ切れた。
「……」
喧騒の中でおじさんは人生について考えた。
逃れる術がないのなら流されるだけ流されてそのあとのことは臨機応変だ、俺ならやれるさ、なんせ人生の酸いも甘いも噛み分けたおじさんだもの、
(……。)
……ウン、たぶん、やれると思うな、やれるんじゃないかな、とにかく今は疲れた体と心を休めるのが先決だ、グラサンの下に隠した涙を飲み込んででおじさんは自分に言い聞かせた。