帝人神様!!折原臨也の場合
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略
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「ここで出来る選択は三つ」
「そんなにあるんですか?」
「その一、折原臨也を善人にする。この難易度は高いわ」
「どんな悪行をしても主人公側につけばチャラになるのが世の中っす。帝人君の言うことに全てYESと答えるなら裁きを受ける必要はなくなるっていうお手軽世界っす」
「いえ、悪いことしたら警察行きましょうよ」
「その二、折原臨也と敵対する。この難易度も高いわ」
「自分の敵は全力で潰してきそうなタイプっすからね」
「怖いです」
「その三、折原臨也と向き合わない。これはスピンオフが出て結局は味方か敵かの二択が現れるわ」
あくまでも狩沢と遊馬崎は二次元を基本に話をする。
「つまりは結局、敵か味方の二元論になってしまうんですか? 臨也さんに中立的な立ち位置ってダメなんですか?」
「その辺りは黒髪ミステリアスの基本を押さえてるわね」
「その時々で利用し、利用され、みたいな事には?」
「ならないわね」
「折原さん的にそれは『興味ない』のカテゴリーじゃないっすか? ただの道具っす。攻略不可のフラグっす」
「まずは攻略できる状態を維持しないとエンディングは見えないわ。というわけで」
どういうわけなのか分からないが狩沢は取り出したノートにさらさらと何かを書いていく。
「みかプーは心底嫌われた後に好かれるか、好かれ続けた後に裏切って嫌われてまた好かれるかを決めるのよ」
「えぇ!? あ、結局は好かれるんですか」
「そりゃあ心の隙間を埋めるんだから、心を満たさないと」
「萌えは心を満たすっすよ。リリンが生み出した最高の文化っす。折原さんを娯楽づけにするのもいいんじゃないですか?」
「イザイザって趣味が人間観察とかいうタイプでしょ? まだ恋愛の刺激の方が早いわ」
「殿堂入りの作品を見つけるまでは長いっすからね。見つけた時は砂漠におけるオアシス以上の価値っすけど」
「砂漠行ったことあるんですか?」
「行ってますよ、ゲームで毎日」
当たり前に返答する遊馬崎に帝人は肩を落とす。
「これから臨也さんに嫌われるんですか」
「そうよ。愛憎ね。ただ嫌われるだけだと攻略失敗」
「黒髪ミステリアス美少女は大体初めは主人公に非協力的で情報を隠したりしますから、そういう意味で本心を喋らせるために感情を刺激させないといけないんす」
「はあ」
ゲームかアニメなどの話だろうが自信満々に語る二人に帝人は納得させられる。実際に二人の理論通りで『駆け魂』を捕まえられたのだ。
「変に友好的なみかプーとイザイザのその関係を一旦リセット! そういう感じでいくつもりよ」
「……さっき言ってた『分厚いヴェールを剥ぎ取る』ってことですか?」
「心に届かない言葉はいくら重ねたところで意味がないの」
「通じ合った後にリピート再生されて味があったりしますけどね」
「直球ストレートにブチかました方が変化球に慣れてるタイプには『あんなこと言うやつは初めてだ。ふふ』とかになるのよ」
「どっかの生徒会長とかっすね」
「そうよ、年上属性よ」
狩沢と遊馬崎は二人で手を打ち合って盛り上がる。
(そんなに上手く話が運ぶかな……でも信じるしかない)
帝人の心の声が聞こえでもしたように狩沢は笑う。
「みかプーは自信満々に『僕のことを好きにならないなんてありえないんです。豚野郎』の立ち場でいいのよ」
「そんなこと思ったことないです」
「でも、いろんなパターンを想定しておくわ」
「これは心の隙間が広がる危険がありますからね」
狩沢が何も言わずに分かっているらしい遊馬崎。
「あとこれって意地悪く選択肢を選ぶときに時間指定があると思うの」
「残り時間十秒過ぎたら選択肢が入れ替わるアレっすか」
「……受け答えの間の取り方を気を付けろってことですか」
二人の意見をなんとか自分なりに解釈しながら帝人は聞いていく。
そんな、こんなで夜は更けた。
「完璧っすね」
「これで勝つる」
「がんばります」
三人は爽やかな顔で朝日を見つめた。
作品名:帝人神様!!折原臨也の場合 作家名:浬@