T&J
視界が悪くて、途中で木の根っこに躓き、派手に転げたけれども、もうどうでもよかった。
全部、どうでもいい!
(ああ、僕は格好悪いさ。みっともないし、格好が悪いし、ぶざまだ)
木の下にひっくり返ったまま、空を見た。
(相手が相手だし、気持ちに答えてもらおうなんて、思ってもいなかったさ。ただ、少しだけでも、笑ってくれたら……)
ハリーは流れている涙をぬぐった。
(僕はうぬぼれが強くて、夢ばかり見ていたから、「もしかして」と心の隅でいつも願っていたんだ)
ハリーは目をつぶると、今度は苦笑する。
(……まぁ、確かに今、自分に向かって笑ってくれたけどね。あんなにもきれいな笑顔で。──一応、望みが叶ったじゃないか)
『おまえっておもしろい顔だな』
ドラコの容赦のないセリフはきつかった、実際に。
ハリーのことなど気にもかけていない、どうでもいい態度で笑い飛ばした。
(最低な、ドラコ)
そうハリーは毒づいてみたけど、そんなドラコのひどい性格は最初から分かっていたはずだった。
毎日顔を突き合わせて、嫌味ばかりを言われ続けていたのだから……。
ただ、ドラコはハリーの前だけで感情的になるから、自分だけが特別なんだと自惚れていたから、余計にそのダメージは大きかった。
「バカな自分」
ハリーは声を出して、呟いてみる。
「がんばれ、自分」
何度もそういって元気付けようとする。
そうしなければもう二度と、立ち上がれそうにもないからだ。
「早く寮に帰ろう……。ロンがチェスをしようと待ってくれているし、ハーマイオニーに溜まっている宿題を手伝ってもらわなきゃ。結構、大変な毎日だし――。毎日忙しいから、こんなことは平気だし、すぐに忘れるし……。すぐに忘れるし……」
そう言いながら、ずっとハリーはその場所から動こうとはしなかった。