T&J
白い封筒を見つめて、ドラコは首を傾げる。
(ポッターは病気ではなかったのか?そのわりには、最後には元気になったみたいだが?それにこの手紙はいったい、なんだ……?)
不思議そうに無地の封筒を持って、表や裏を確かめる。
別にそれは吠えメールではないらしい。
(なんでアイツが僕に手紙なんか渡すんだ?――っていうか、本当にこれは僕宛てなのか?)
たくさんの疑問が頭に浮かんだ。
ハリーはこれを手に持ち、とても深刻な顔をして思いつめた表情で、封筒を見ていたはずだ。
その姿を見て、とてもこの中身が知りたかったのは確かだ。
でもその手紙を渡す相手が自分とは、夢にも思わなかった。
不安と疑問と好奇心に心が揺れる。
やがて決心したのか、ゴクリと唾を飲み込むと、無作法だが指で開封してみることにした。
(もしかして呪いが込められた手紙だったりして)と思った。
彼を散々いじめて罵詈雑言を浴びせまくったドラコには、その予想がひどく当たり前のように浮かんでくる。
ドラコの顔が引きつる。
けれどもその不安よりも、興味のほうが数倍は大きいのは事実だ。
(呪われるのか?それとも――――?!)
ほとんど賭けのような気持ちで、息をとめて便箋を開いてみた。
そこにはひどく震えた読みにくい文字で、数行の文が書かれていた。
「君のことが好きです。
よかったら、僕と付き合って下さい。
ハリー・ポッター」
ドラコは読んでも、その言葉の意味がまったく理解出来ずにいた。
(……・これはいったい何だ?)
再度手紙に目を落として、往復して何度も読みかえしてみる。
やはり全く文字が頭に入って来ない。
自分の頭が一切、この手紙の内容を拒否しているからだ。
(これは僕の知らない、マグルの言葉か何かなのか?!僕にはこの文字が、とても変な意味に読めるのだが?)
ありえない、理解しがたい、そして信じられない言葉が手紙には書かれてある。
ドラコは眩暈を感じてフラフラと数歩下がると、倒れこむようにベンチに座った。
見上げると、ものすごく澄んだきれいな青空が開けている。
授業はもうとっくに始まっていて、とうとう一時限目をエスケープしてしまった。
教授にはさぼった理由をなんて言えばいいんだろう?
(ああもう、そんなこと、今はどうだっていいじゃないか。それよりもこの手紙は、いったいどういう意味なんだ?)
ドラコは頭を抱えた。
(誰か、この手紙の本当の意味を教えてくれないか。お願いだから――)
もう、何がなんだか分からなくなって、ドラコは深いため息をついたのだった。