らぶこめ
愛が試されるとき
志摩家。
「そしたら、出かけてくるわ」
そう明るく言って、柔造は出ていった。
金造が縁側で三味線を抱えていると、廉造がやってきた。
「金兄、柔兄はどこ行ったん?」
「ああ、宝生家や」
「え、なんで?」
「今日は祭やから、手伝いに行くらしーわ」
「祭?」
廉造は表情をひきつらせた。
「宝生家の祭って、もしかしてアレ……?」
「そうや、アレや」
宝生家の祭。
それは、宝生家を守護する蛇様に感謝の念を伝えるものである。
宝生一族が宗家に集まり、蝮のような手騎士たちが蛇を召喚する。
だから、蛇が苦手な者が見たら卒倒しかねない光景となる。
それから、宝生一族は蛇様たちに喜んでもらえるように踊りを披露する。
その踊りは盆踊りを少し激しくしたような感じだ。
宝生一族はあくまでも真面目に踊る、一心不乱に踊る。
やがて、蛇様たちは奉納された酒に酔い、宝生一族の中に入り、ともに踊るようになる。
そんな祭である。
「俺、あの祭には、よう行かへんなぁ……」
廉造は遠い眼をして言う。
「あの祭の手伝いに行くって、柔兄の本気を感じるわ」
本気とは、もちろん、蝮に対してということだ。
今のところ完全に片想いであるようだが、相手に誠意が伝わるよう努力し続けている。
「ムコ養子に入る覚悟もしてたりして」
「せやったら、俺がこの家を継ぐわ」
金造はニカッと白い歯をきらめかせて笑う。
「俺が志摩の当主、おお、カッコええなあ!」
「……PEACEをPACEって間違える金兄が志摩の当主か〜」
ホンマにそうなったら大丈夫なんかなウチ、と呟く廉造だった。