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【シンジャ】百花蜜【SPARK】

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「一人娘を嫁に貰って欲しいという事を言われたんで、いつものように妻を娶るつもりは無いと言うつもりだったんだが、その前に自分の娘を嫁に貰って欲しいと横から別の相手に言われる事になったんだ」
 その時の事を思い出しているのか、そう言いながらシンドバッドは疲れ果てた様子へとなっていた。
「その後、自分の娘を嫁に貰って欲しいと言って来る者が次々に現れ、妻を娶るつもりは無いという言葉で納得させる事が出来無い状況になってしまったんで、仕方無く黙っていたが婚約者が実は自分にはいるという事を彼らに言ったんだ。これで諦めてくれるかと思ったんだが、諦めの悪いのが中にいてな……。その婚約者と一緒に、是非自分の国で行われる花祭りに来て欲しいと言われたんだ」
 それに対してシンドバッドが何と答えたのかという事をまだ聞いていなかったが、何と答えたのかという事を、今まで聞いた話しの内容と彼の態度から察する事が出来ていた。
「彼女は体が弱いので難しいという事や、どこぞの富豪の娘や姫君などでは無いので、彼女に恥をかかす事になってしまうと言ったのだが全て聞き流されてしまい、最後には花祭りに婚約者と行くという事に勝手にされてしまったんだ」
 そう言い終えると同時に溜息を吐いたシンドバッドを見て同情した。王や地位の高い人間が必ずしも出来た人間であるとは限らない。自分勝手な者や話しが通じない者も中にはいる。花祭りに婚約者と行く事を勝手に決めた相手もそんな中の一人なのだろう。
「それで、どうなさるおつもりですか?」
「こっちの意思を無視してあっちが勝手に決めた事なんで、断りの手紙を出して済ましたい所なんだが……」
 そう言ってシンドバッドが顔を顰めた事から、断りの手紙を出して済ませる事が出来無いような相手なのだという事を察する事が出来た。
「相手は何処の国の王なのですか?」
 花祭りがある国は幾つかある。花祭りがある国のうちのどの国なのだろうと思いながらシンドバッドからの返事を待った。
「ハーレダーンだ」
「ハーレダーン……」
 どこの国であるのかという事が分かり、思わずシンドバッドの言葉を反芻してしまった。
 ハーレダーンはレーム帝国の奥にある、海に面した国である。その国には資源が豊富な鉱山があり、そこで取れる宝石と貿易によって栄えている豊かな国である。その国と揉めるような事になれば面倒な事になってしまう。断りの手紙一つで済ませる事が出来無いとシンドバッドが思っている理由が、相手が何処の国であるのかという事を知る事によって分かった。
「私の記憶が確かであれば、あの国の王の御子は確か一人。その一人は王女であった筈です。彼女の結婚相手にはもっと相応しい相手がいる筈です」
 決してこの言葉はシンドバッドを馬鹿にしているものでは無い。その事はシンドバッドには伝わっている筈であるので、馬鹿にされていると自分の言葉を聞き彼が思わないかという事を心配する事は無かった。
「その通りだ。だが、どうしても俺を自分の国に連れて行きたいようだ。……相手が相手だけに、行くしか無いだろう」
 自分も行くしか無いという事を思っていたので、シンドバッドの言葉に異論を唱えるつもりは無かった。
「では、婚約者はどうされますか?」
「それが問題なんだ……」
 大きな溜息を吐いたシンドバッドは、胸の前で組んでいた腕を解くと片肘を机に置き手で額を支える格好になった。
「婚約者など本当はいないと今更言う事はできん。かといって、適当に見繕った相手を連れて行く訳にはいかん」
「そうですね……。何が起きるか分かりませんので、連れて行くのならば武術の心得がある者の方が良いでしょう」
 シンドバッドと娘を結婚させたいのならば、シンドバッドの婚約者は邪魔な存在である。不慮の事故を装って亡き者にされてしまう可能性が無いとは言え無い。
「そうだな」
「それと、あなたに恥をかかせたり国交がこじれたりしては困るので、教養のある聡い女性で無ければなりませんね」
 シンドバッドの本物の婚約者になる訳では無いのだが、婚約者として向こうの王に会うのならば、こういう女性で無ければいけないという条件が幾つもあった。今言った条件は、そんな条件の中の幾つかでしか無い。
「そんな女性など……」
「ピスティなんか最適じゃ無いですか?」
 条件にあった女性を頭の中で探していると、シャルルカンのそんな言葉が聞こえて来た。
「そうですね。武術の心得も有り、教養もあり聡い女性で、なおかつシンに本気にならない……。ピスティほどの適任者はいないかもしれませんね」
 シンドバッドの婚約者を演じる者の条件の中には、婚約者を演じているうちに勘違いしてしまわない女性という項目もあった。シンドバッドの事を本気で好きになられてしまうと困る事になってしまうからだ。ピスティならば、シンドバッドの事を本気で好きになる事は無い。そう言い切る事が出来たので、婚約者を演じて貰うには最適な人間で彼女はあるだろう。
 自分の意見をピスティがどう思っているのかという事が気になり彼女の方を見たのだが、シンドバッドの婚約者を演じるのは絶対に嫌だという事を思っている様子は無かった。シンドバッドの婚約者を演じるのは彼女で決定であると思っていたのだが、それを言う前に異議をシンドバッドから唱えられてしまう事になった。
「俺が幼女趣味だと思われる事になるだろ」
「ピスティはもう十八ですよ。確かにあなたとは十一離れていますが、幼女趣味と言われてしまうほど離れていませんよ」
「そうですよ!」
 自分が婚約者になると幼女趣味だと周りから言われてしまうとシンドバッドが思っている事を不満に思っているのか、そう言ったピスティの声は不満そうなものであった。
「確かに年齢的にはそうかもしれんが……」
 それ以降の言葉は続けない方が良いと思ったのか、そこでシンドバッドは言葉を区切った。
 シンドバッドがそれ以降の言葉を続けなかったのは、ピスティが実年齢よりも若く。若くというよりも幼いと言った方が良いだろう。幼く見える事を気にしている事を知っているからだろう。
「確かにそうですね……」
「ジャーファルさんまで!」
 シンドバッドの意見は尤もなものであると思っていると、ピスティから肩を怒らせながら名前を呼ばれる事になった。
「すみません」
「それもありますが、こいつを連れて行ったら何が起こるか分かりませんよ」
 頬を膨らまして怒っているピスティに対して謝罪していると、シャルルカンのそんな言葉が聞こえて来た。
 シャルルカンがそんな風に言った理由は直ぐに分かった。幼い少女のような見た目をしているが、恋多き女性でピスティはある。複数の男性と常に付き合い、王宮内で何度も恋愛関係での揉め事を彼女は起こしていた。
「そうですね。行った先で何かあると困りますし……」
 今まで何度も王宮内で恋愛関係の揉め事を起こしているピスティを諫めている。しかし、全く彼女の素行が改善される事は無かった。