幼なじみロマンス
宝生家。
その玄関に、柔造はいた。
眠っている蝮を背負って土間に立っている。
そして、眼のまえには、宝生家の当主がいた。
宝生蟒は式台に立ち、柔造をじっと見ている。
玄関は灯りがついているので明るいが、家の外は暗い。
夜遅い時間なのだ。
そんな時間に、大切な娘がどうやら酔っぱらって眠ってしまったらしい状態で男に背負われて帰ってきた。
柔造の父の八百造が同じ状況になれば、その背景に轟々と燃えさかる赤い炎が見えるようになるだろう。
そして、今、蟒の背後には、烈々と燃えあがる青白い炎が見えた。
あきらかに怒っている。
無理もない。
蝮の妹の錦と青が心配そうに様子をうかがっている。
柔造は彼女たちを手招きした。
すると、錦と青は蟒を気にしながらも、近づいてきた。
そちらのほうに柔造も近づいていき、式台に蝮をおろした。
蝮は眼をさまさなかった。健やかな寝息をたて、眠っている。
そんな蝮を錦と青に預けると、柔造はついさっきまでいた位置へともどった。
蟒の正面に立つ。
「柔造さん、これは一体どういうことか、説明してくれるか」
「はい」
神妙な面持ちで柔造はうなずいた後、腰を落とした。
土間に正座する。
「俺が飲ませすぎました。申し訳ありません」
柔造は土間に手をつき、蟒に向かって深々と頭をさげた。