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幼なじみロマンス

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それを蝮はじっと見る。
目的としていた本で間違いない。
蝮は手のひらを上にして柔造のほうにやる。
すると、蝮が本をつかむより先に、柔造が蝮の手のひらに本を置いた。
その本を自分のほうに引き寄せる。
「……ありがとう」
蝮は礼を言った。
つい眼をそらしてしまっていた。
「たいしたことやないわ」
柔造は明るく言う。
「それより、その本」
そう柔造が話を続けようとしたとき。
「うわっ……!」
頭上から、なにかに驚いているような声が聞こえてきた。
蝮は声がしたほうを見あげる。
可動式ハシゴの上のほうに男の仏教系祓魔師がいる。本棚の一番上の段に収められていた本を取ろうとして失敗したらしい。
本が、何冊も、降ってくる。
「!」
蝮はぎょっとした。
次の瞬間。
柔造が身体をつかんできた。
その力は強い。
床へと引き倒される。
さらに、蝮の背中に覆いかぶさってきた。
その直後、本が勢いよく落ちてきて、床へと叩きつけられた。
だが、すべてが真っ直ぐ床に落ちたのではなかった。
何冊かは柔造に当たってから床に落ちたようだ。
それを、蝮は柔造の身体の下にいて感じた。
「うわああ、あっ、あの、すみません……! 大丈夫ですか!?」
本を落とした張本人らしい焦った声が聞こえてきた。
可動式ハシゴからおりてきたらしい。
柔造が身体を起こした。
「ああ、大丈夫や」
立ちあがりながら、返事をする。
その声に相手を非難する響きは一切ない。
「俺の身体は頑丈にできとるからなぁ」
柔造は笑い、周囲に落ちている本を拾い始める。
あっというまに、落ちていた本をすべて拾い集めた。
「ちゃんと元の場所にもどさなアカンで」
「はい、ホンマにすいませんでした」
男の仏教系祓魔師は柔造から本を受け取りつつ、頭を下げた。蝮に向かっても頭を下げた。
それから、本を持って可動式ハシゴをのぼっていく。
柔造が蝮のほうを見た。
「大丈夫か?」
「……私は大丈夫や」
なにしろ柔造が身を挺して守ってくれたのだから。
作品名:幼なじみロマンス 作家名:hujio