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リスティア異聞録 2章

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「アヴァロン貴族 オーレリア・ノワールが娘 セシリー。ルーシェ殿の寛大なご措置に感謝します」

セシリー これがツヴェルフの本来の名前である。ツヴェルフはそっぽを向いているルーシェに敬礼をすると、馬に乗り帰路につく。初めての戦いの狂熱、初めての人肉を斬った不快、そして「敗者に最大限の敬意を」という言葉。この言葉に自分が獣ではなく人間であることを繋ぎ止める力、縋るべき根拠が有るような気がして救われた。混乱している訳ではなく冷静なままグチャグチャになっていく自分と、その快楽に身を委ねながら無我夢中で走っていると、気付くと家に着いていた。

ツヴェルフは翌朝から、魔法の修練をやめて剣の修練ばかりに打ち込みはじめた。ノワール卿も、その様子に呆れながらも、

「ハシカのようなものであろう。すぐに飽きて魔法の修練もするようになるさ……」
と放ったらかしにしておいたが、このハシカは今になっても治らないようである。

作品名:リスティア異聞録 2章 作家名:t_ishida