二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

リスティア異聞録 2章

INDEX|8ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 


ツヴェルフ達は、この先、連戦を重ね戦線を押し上げるも、アヴァロンは精強なログレス兵の前に一進一退を余技なくされる。泥沼の攻防の末、物量に勝るアヴァロン側が粘り勝ちをして、ログレスはこの戦線を放棄する。アヴァロンはこれを受けて、消耗は激しいもののガラス古戦場まで追撃の手を伸ばし、一気にログレスを押し込める方針を取る。ツヴェルフ隊は一度アヴァロンに戻り休養を取った。

長いようで短かった遠征を終えアヴァロンに着くとツヴェルフは、

「では4日後の朝未明、騎士団の詰所前に集合で。では、解散っと思ったんだけれども、せっかく初陣で皆無事に帰ってこれたんだし夕飯食べにいかない? ああ、これ命令じゃないから参加は任意で良いんだけれども」

ウェンディが間髪入れずに質問をする。
「酒?」

ツヴェルフが苦笑しながら、
「まあ明日から休暇だし良いでしょう。ただ緊急出動も無くはないから、あんまり飲み過ぎないように」

ウェンディが間髪入れず、
「じゃあ、行く」

続いてケフィが悩みながら、
「んー、でも、このまま行く感じか? 自分の汗臭さで生命の危機を感じるから、出来れば着替えてから行きたい」

ツヴェルフがうーんっと唸りながら、
「えっとぉ…… じゃあ、後で再集合にする? 一回、帰っちゃったら出てくるの面倒にならない?」

するとケフィが、
「いや、大丈夫。丁度、皆と美味しいもの食べたいと思ってたところだったし。特にツヴァイが歩きながら鷹肉の燻製を延々と食べ続けているのを見ていたら、ドワーフ亭の竜肉の厚焼き食べると、どんな顔するのか見てみたいって思ってね」

ツヴァイが
「えっと、特に予定無いから行くつもりだったけど、これじゃあ絶対に断われないムードじゃん……」

ツヴェルフがポンっと手を叩きながら、
「これで全員の出欠確認が取れたかな……、まさか全員集合になると思わなかったけど……、じゃあ、二刻後、夕飯には丁度良い時間かしら…… ドワーフ亭の前に集合で」

ツヴェルフが屋敷に帰り、不機嫌な両親をいなしながら水浴びをして、軽装に着替え、二刻後。ドワーフ亭についた時には全員揃っていた。ドワーフ亭に入り注文を済ませると神妙な面持ちでケフィが突然口を開いた。

「ちょっと、飲む前にわたしの話を聞いて欲しい。ツヴェルフ、ツヴァイ。まず貴女達に謝りたい。わたしは、この初陣まで貴女達をイマイチ信用していなかった。"この戦乙女共が、足手まといになるなよッ!" とか思っていた。それどころかツヴェルフ、貴女にはラストワンをかける時、"いい子ぶってて、エラそうでムカつく奴、なんでお前が隊長なんだ、事故って死んでしまえば良いのに" って思いながらかけた事も有る。こんなこと言えた義理じゃないのは分かっているが信頼させて欲しい。これを聞いて貴女達が私を信じられなくなるなら、それでも良い。私は一方的に貴女達を信頼する」

ツヴェルフは苦笑しながら答える。
「なんだ……そのことなら分かってたから大丈夫だよ。私のこと嫌いかなぁ……ってのは、なんとなく感じていたし。でも、ちゃんと指示は聞いてくれるし提案もくれるから、特に困ってはいなかったよ。でも、信頼してくれるなら嬉しいし、どうぞ信頼してください。ケフィがどう思ってようと私も信頼してるよ。これからもよろしくね」

ツヴァイも続く、
「って言っても、実際、あたしら平民の魔力無しだし貴族様が頭下げることは無いでしょ。こうやって話聞いてくれて、一緒に飯食ってくれるだけで有り難いんだし、それどころか公平に扱かってくれているし、割と仲良くしてくれるの、むしろ有り難いと思ってるくらいだし。」

ウェンディが間の手を入れる
「ってか、どうでも良いから早く飲まない? あーでも、ちょっと気になるかも。なんでそんな嫌いだったツヴェルフのこと信頼することになったの? というか、なんでそこまで嫌いだったの?」

ケフィが神妙な顔で続ける
「まず、ツヴァイ、あたしら……って思ってるのがおかしい。ウェンディは気付いていると思うけど。えーっと、そこから説明すると…… 魔力が感じられないツヴァイには分からないかも知れないけどツヴェルフは魔力の訓練をろくにしてないはずなのに、多分この中で一番魔力が強い。つまりわたしや、ウェンディよりも。これはもう才能、というか血筋の問題。ツヴェルフは多分、貴族。しかも私やウェンディのような下級貴族は、本来一生肩を並べてお酒飲むなんてことは無い。そういうレベルの大物貴族よ」

ツヴァイが本気で驚いた様子で
「えッ? そうなの? 魔力が強いと聞いてはいたけれども、そんなに凄いの?」

ケフィはツヴァイの間の手を無視して続ける、
「その大物貴族の娘が、何の酔狂で戦乙女なんかやっているんだ、しかも、よく分からない理屈をこねて騎士名拝受の待遇まで断わって、ユニオン人みたいな騎士道まで語り出すし、どうも虫が好かないというかね…… ボンボンの娘が自分に酔っちゃって、それに付き合わされている感じ? そのクセ家柄のおかげなのか隊長職までもらっちゃって、キーッって感じ? でも、一緒に戦っているうちに、それは伊達でも酔狂でもなく、強い信念が有ってのこと。そういうのを感じるようになった。先日の戦いの時、ラストワンがかかった状態で一刻も早く敵を倒さないと自分が死ぬかも知れないのに、矢が私に向かっているのに気付いて、それを庇ってくれた。そして、そのことを問い但すと、"大丈夫、皆生きて帰れる。私を信じろ"って言ったのよね。ああ、この人、本気だ、本気で騎士をやっているんだ……って思った、多分、そこから見る目が変わったのかなぁ…… ツヴェルフのことをそうやって見れるようになったら、ツヴァイの見方も変わってきた。実は凄い奴なんだ、絶対に私じゃ出来ない身体の張り方してるって分かった、ああ、魔力が有る無し関係なくて、」

ウェンディが割り込む、
「そう、それぞれが、それぞれの出来ることをやっている。自分には無いモノを持っている誰かを信頼して身を預ける。だから私達は強いって話でしょ? もう良いから飲もうよ、っていうかわたし、もう飲むし」

ツヴェルフが苦笑しながら、
「ちょっと、そういうの照れるからやめようよッ! 私は変わらずに、ケフィもウェンディも信頼してるし信頼させてもらうし、信頼してくれるっていうならば、信頼を裏切らないように頑張るから。あとツヴァイ、私が貴族の生まれっていうのは否定する理由も無いから答えると、その通りだよ。でも、生まれとか関係無く皆が平等に繋って、それぞれが、それぞれの出来ることをする世界っていうのが私の目指す世界だから、今まで通りに接して欲しい。これはお願いね」

ツヴァイが、
「お願いなら仕方無いけど……それ聞いた後だと身構えちゃうよ……でも頑張る!」

ケフィが、
「じゃあ、ツヴェルフのその夢、一口乗った! だから、ツヴァイ、私もお願い!」

既に飲んでしまっているウェンディが、
「じゃあ、よく分からないけど私もッ!」

そしてドワーフの親父が
「おい、せっかく冷やした活力酒がヌルくなるから早く飲んでくれ!」
作品名:リスティア異聞録 2章 作家名:t_ishida