forever,fornever
<ワルツ>
なあ、おまえどうしてこの町に残るの。
卒業式の日、担任は生徒に聞いた。素行は問題だらけだが学校始まって以来の秀才と名高く、つい先ほども堂々と答辞を読んだ生徒を受け持ったのは、良かったのか悪かったのか。誇らしい分手を焼くことも多かっただけに、別れ間際の今でもわからない。変わり者の彼は、レベルの高い大学よりも地元の高専への進学を選んだのだ。
進路指導のときに言いませんでしたか。僕はスペシャリスト向きだと思うんです。大学に行くより、さっさと手に職つけて社会に出て稼ぐ方がいい。早く自立したいんです。人が多すぎるのも好きじゃありませんしね。
もったいないよなあ・・・・うちの高校始まって以来の東大生が出るんじゃないかって、先生全員で言ってたのにさ。俺、何か指導に問題なかったかとか校長に言われちゃったよ。
それはそれは。クフ、失礼しました。人の心配より、先生、来週の結婚式の手筈は大丈夫ですか?バージンロードで転びそうですよね。
お前に言われると本当になりそうで怖いよ・・・・実はここんとこ、メシが喉通らなくてさ。
初恋は叶わないって言いますが、叶うこともあるんですね。まあ、おめでとうございます。
うん、ありがとう。彼女高嶺の花だったからなあ、人生の幸せ全部使い果たした気分。
精々振られないように気をつけるんですね。先生は恐ろしく鈍いかありえないくらい鋭いか、どっちかしかない人だと思いますよ。
あー・・・・昔俺の先生が似たようなこと言ってたなぁ。
まあ、僕はたぶんずっとこの町にいます。だから彼女に捨てられたら、電話して下さいね。慰めるくらいはして差し上げますよ。
なんだ、それ。そういうセリフはさ、好きな女の子に言えよ。あと縁起でもないこと言うな。
やれやれ、さっきの忠告は無駄でしたね。では、お幸せに。いずれまた。
あっさりと首をすくめて踵を返した、すんなりと高い背に、何かを見落としている気がしたが、教師は結局気付かなかった。
作品名:forever,fornever 作家名:銀杏