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　高町なのはの姿をコピーした、
――数百人のまどか軍団を前にして、
……ヴィータは、その小さい顔を、
真っ赤にして怒りまくっていた。

「ふっざけんじゃねぇ！

　なのはは……

　なのはは、たった１人だ！

　このあたしと一緒に戦っていた高町なのは、
　ただ１人だけなんだ！！

　ニセモノなんか、全部、
　このあたしが叩き潰してやるぅッ！！」

　ヴィータは、そう叫ぶと、
コピーなのはの大群に猛突進していく。

「アイゼン！」
〔ヤボーン！〕
　魔力カートリッジをロードして、
ハンマー型に変形するグラーフ・アイゼン。

「ラケーテン！　・　ハンマ――――！！！」

「待て！　ヴィータッ！　無茶をするな！」
　ザフィーラの静止を無視して、
――ロケット推進機能を持つ、
ハンマー型のグラーフ・アイゼンを
グルグル振り回しながら、敵軍に突っ込んでいく
ヴィータだったが、――――

「「「アクセル・シューター！！」」」

「ぐほっ！！」

　――コピー・なのは達の、誘導魔法弾の
集中砲火をまともにくらって、
黒コゲになって墜落していくヴィータ。

「ち、畜生ッ……」

◇　◇　◇

　海岸では、いまだに、シグナムと、
リーダー格の鹿目まどかが、睨み合いを続けていた。

「ねえ、剣士さん？

　こんな所で、私の相手をしていても、
　いいのかな？

　今頃、あなたのご主人様は……」

「ぬ……おのれっ！！」

　まどかを、一瞥してから、飛び去るシグナム。

◇　◇　◇

　その頃、時空管理局の魔導師部隊は、
大混乱に陥っていた。

　なにしろ、あの高町なのはの大群が、
自分達に向けて、大魔力砲撃を
連発してくるのだ。

　冷静に、対処しろと言う方が
無理であろう。

「皆、落ち着いて！　隊列を乱さないで！」
　なのは本人が、指示を与えようとしたが――

「ひ？！」
　おびえきった局員の１人が、本物のなのはに、
デバイスを向ける。

「えええ？！　ちょ、ちょっと待って！」

「うわああああ――――――ッ！！」

　――　バシッ！　――
　なのはは、局員からの射撃魔法を、
シールドで、防御すると――

「しっかりしなさい！！　私は、本物よ！」
　局員を叱りつけるなのは。

「うあっ？！　あ？　
　し、失礼しましたっ！！　高町一尉っ！」
　間違いに気づいて、慌てて詫びる局員。

「こう言う状況じゃ、仕方ないけど、――
とにかく、体勢を立て直さないと。

　このままじゃ、――全滅する！」

　なのはは、自分と同じ姿に変身した
まどか軍団を睨みつけていた。

◇　◇　◇

　フェイトは、はやてを護って奮戦していた。

　だが、敵が多すぎる。
　強力な砲撃を連発してくるコピー・なのはの大群。

「私はいい！

　逃げて……

　逃げて！　はやて！」
　フェイトが、はやてに叫ぶ。

「うう……
　くっ！」
　はやては、後ろ髪を引かれる思いで、
高速飛翔していった。

「まだ、やれるね、バルディッシュ」
〔イエッサー！〕
　バルディッシュが、まだ戦える事を
主（あるじ）に告げる。

「……殲滅する！

　トライデント――」
　フェイトが、大威力砲撃を
準備し始めたその時――

「「「ショート・バスター！！」」」
　コピー・なのは達が、一斉に魔力砲撃を放つ。

「し、しまった！　速射砲……」

　フェイトは、あわてて、防御しようとしたが、
――フェイトを包み込んだ、
ショート・バスターの桜色の光が、
大爆発を起こした。

◇　◇　◇

　はやては、先程、なのはが出てきた
ドーム状の建物の内部に隠れていた。

（まさか、こないな事態になるなんて……）

（どないしたら、ええねん……）

（本局に増援を頼むか？　しかし、この状況では……）

（それとも、結界を解いて、皆を退却させるか？
　いや、しかし……）

　はやてが、あれこれ、考えていると、――

　――　ザッ、ザッ、ザッ　――

　戦闘で、廃墟と化した街の中を、誰かが、
歩いてくる足音が聞こえた。

（だ、誰か来る？！）

　――　ザッ、ザッ、ザッ、ザッ　――

　足音は、明らかに、はやての隠れている
ドームに近づいている。

（誰や？！　敵か、それとも味方か？）

　――　ザッ、ザッ、ザッ、ザッ　――

　はやては、その手の中の、
シュベルトクロイツを強く握り締めた。

　額から、いやな汗が流れ落ちる。

　――　ザッ、ザッ、ザッ　――

　近づいている何者かは、もうはやての、
手が届きそうな間近まで迫っていた。

　ゴクリと、つばを飲み込むはやて。
　
　そして……

「はやて！」

「そ、その声と、魔力反応は！」
　ドームから、飛び出すはやて。

　目前にいたのは、フェイトだった。

「な、なんや――フェイトちゃん。

　無事やったんか――

　よ、よかったわ。

　ウチは、てっきり……」

「バルディッシュ・ザンバー！」

「？！」

　いきなり、はやてに、斬りかかるフェイト！

　そこに、割って入ったのは、シグナムだった。

　はやてを護って、フェイトのザンバーを
レヴァンティンで、防御しているシグナム。

「シグナム？！　
　い、いや、２人とも何しとるんや？！」

「主（あるじ）はやて。
　こやつは、ニセモノです！」

「なんやて？！」
　シグナムの言葉に、絶句するはやて。

　目の前にいるフェイトはどう見ても、
本物にしか見えない。

「ふふふ。
　こうやって戦うのは、久しぶりですね、
　シグナム」

「言うな！
　このニセモノめ！！」
　からかう様な、コピー・フェイトの言葉に、
憤慨するシグナム。

「ま、まるで悪い夢でも見とるようや」
　頭を抱えて、ふらつくはやて。

「ここは、私に任せて、後退してください。
　主（あるじ）はやて！」

「シグナム？！」

「お願いします！」

「分かった！
　無茶するんやないで！」

「はい！」

　その場から、飛び立つはやて。

「ふふ。
　たとえ、あなたでも、私には、――
　いえ、私達には決して勝てない。

　アギトを連れて来ていない貴女では」

　死刑宣告でもするかのようなコピー・フェイトの
言葉と共に――
バルディッシュ・ザンバーの鋭い刃が、
レヴァンティンにギリギリと食い込んでいく。

　アギトとは、リインと同じ
ユニゾン・デバイス（融合騎）であり、――
ＪＳ事件の際にシグナムと出会って以来、
彼女のパートナーとなった。

　今回、訳あってアギトは、
シグナムに同行していない。

「ならば、試してみるか？
　飛竜一閃！」
　シグナムは、一度後方に飛び退き、――
レヴァンティンを連結刃の形態にして――
魔力を伴なう高熱火炎の柱を、――
連結刃の突き攻撃に加えて、――撃ち出した。

　シグナムに対峙していた、コピー・フェイトは
とっさに回避したが――シグナムを包囲していた
数人のコピー・フェイトは、飛竜一閃をまともに
食らって、瞬時に焼け死んだ。