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緊急指令!鹿目まどかを抹殺せよ! リリカル☆マギカ(第2話

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「ビッグ・タイガー、なおも、接近」
 オペレーターの言葉通り、
メイン・スクリーンにビッグ・タイガーが映り、
その姿がみるみる大きくなる。

 ――と、ビッグ・タイガーの一部が光り、――
「ビッグ・タイガー、魔導砲を撃ってきます!

 出力は、低くしてくれてますが、――」
 オペレーターが、悲鳴をあげる。

「こちらも、主砲を!

 ただし、当てては、ダメよ。

 ――あくまで、威嚇射撃、――
 
 出力2パーセントに固定」

 リンディの指示に従って、火器管制係が、
主砲を準備する。――

 ビクトリーと、ビッグ・タイガーの、
魔導砲の青白いビームが、
暗い宇宙空間を、交互に飛びかう。

 そして、2隻の次元戦艦は、
高速のまま、急激に接近し、――
400メートルぐらいの、至近距離をすれ違った。

「防御シールド全開! 最大戦速!

 隠れられる場所を探して!」
 リンディの命令が、オペレーターに跳ぶ。

「9時方向に、
アステロイド・ベルトが有ります!」

「砲撃中止!

 攻撃を回避しつつ、そこへ、向かって!」

 艦首側面に装備した、緊急機動バーニア(推進装置)
から、大きな火炎を吹き出した、――
ビクトリーは、艦の向きを、
急激に変えて、アステロイド・ベルト
(宇宙に存在する小惑星が、集まって帯び状になったモノ)
へ向かって、加速を開始した。

◇ ◇ ◇

 ここは、ビッグ・タイガー艦内の、ブリッジ(司令室)。

「ビクトリー、逃げて行きます!」
 オペレーターの報告を聞いたレティは、――

「逃がすな!

 魔力エナジー・ミサイル発射!!」

 レティは、――まさに、大トラのごとく、吼えた!!

◇ ◇ ◇

 再び、ビクトリー艦内の、ブリッジ(司令室)。

「魔力ソナーに、感!

 質量兵器の反応! ミサイル接近!」

 再度、悲鳴をあげる、若いオペレーター。
 
「迎撃ミサイル発射!!」

 リンディの命令によって、――
ビクトリーの艦尾から発射された、多数の
迎撃ミサイルが、次々と、ビッグ・タイガーのミサイルを、
撃ち落していくが、――――――

 撃ちもらした、1発のミサイルが、ビクトリーの、
すぐ近くの岩石に、着弾し、――爆発で、
ビクトリーの巨体が大きく揺さぶられる。

「わあっ! うわわわわっ!!

 こ、これじゃまるで、戦争じゃねえか!」
 杏子が、悲鳴をあげた。

「そうよ。

 あなた、何だと思ってたの?」
 いまさらと言うように、ほむらが言う。

「じょ、冗談じゃねえぞ!

 あたしは、戦争するために、
 こんな所まで来た訳じゃ、…………」

「じゃあ、ここで、この艦を降りて、
 逃げ帰る?」

「う! そ、それは、……ええと、何だ?」

「何?」

「こっ、こっ、……ここまで来たら、
 せ、戦争でも、何でも、やってやらあぁ!!!」

「まったく、この人達は、……
 のん気なんだか、真剣なんだか?」
 杏子と、ほむらの、漫才のような、
やり取りに、ため息をつく、巴マミ。

「Jタイプ・ステルスシールド展開!

 振り切るわよ! 機関全速!

 小惑星に艦をぶつけないよう、
 気をつけて!」

 リンディの命令により、オペレーター達は、
何か特殊なシステムを、起動させたようだった。

 しばらく、ビクトリーが前進した後、――
ステルスシールド(探知妨害装置)の
おかげで、ビッグ・タイガーは、
ビクトリーの位置を見失ったらしい。

 ――リンディの指示によって、ビクトリーは、
小惑星が密集しているポイントに停止した。

「さっきの、ミサイルですが、……」
 オペレーターが、リンディの所に、
報告しに来た。

「何?」

「魔力エナジー・ミサイルの一種です。
 装填していた魔法は、強化した捕縛魔法でした」

「――て、事は?」
 杏子の頭の上に『?』マークが、浮かんだ。

「本艦に、一発でも直撃をもらえば、
動けなくなって、捕まりますね」
 オペレーターが、親切に教えてくれた。

「あらあら、それは、困ったわね」
 リンディが、のん気に感想をもらす。

「この人も、真剣なんだか、のん気なんだか?」
 再び、ため息をつく、巴マミ。

「――にしても、変ね。――データ上は、
この宙域に、これほど大規模な、
アステロイド・ベルトは無いはずなんだけど」

 リンディ達は、このアステロイド・ベルトの
大半が、――サリーと、まどかの戦いによって、
破壊された惑星の『成れの果て』である事を
まだ知らない。

 2つに割れた惑星は、その後、お互いの
引力によって引かれ合い、激突して、
さらに小さな、たくさんの小惑星に、
爆散して、アステロイド・ベルトの
元になったのだ。

 それが、ビクトリーにとっては、
恰好な隠れ場所となったのは、
皮肉な運命の巡り合せ、
と言うべきであろうか。

「ビッグ・タイガー、
本艦に接近してきます」
 オペレーターが、報告する。

「発見されるのは、時間の問題ね。

 いくら、高性能のステルスシールドを
 使っても、『人間の目』で見れば、
 認識可能だから」

 リンディが、作戦を考えていると、――

「そう言えば、こういうの、昔、
 テレビでやってた何かのアニメで見たよ」
 
 この杏子の言葉に、――

「あら、おもしろそうね。

 どういう話だったの?」

 リンディが、興味を示した。

「ええと、…………確か、
 …………うーんと、

 傷ついた宇宙戦艦が、アステなんとかに、
逃げ込んで、――敵の目を、くらますために、
――岩石を、その艦にひっつけて、
でっかい岩に見えるようにした、――
って、話だったような?」

 杏子が、何度も、小さい頃の記憶を
思い出しながら、説明した。

「いいわね、それ!

 それで行きましょう!」

「へ?」

 リンディの満面の笑みに、
再び、杏子の頭の上に浮かぶ『?』マーク。

◇ ◇ ◇

 こちらは、ビッグ・タイガーの、ブリッジ。

「ビクトリーは、まだ発見できないの?!」
 レティが、イラついた声を出した。

「も、申し訳ありません。
 あの艦は、ジェイル・スカリエッティが
製作した試作型ステルスシールドを
搭載していますから、恐らくは、……」

 戦々恐々な感じで、オペレーターが、
言い訳するように、説明した。

「司法取引で、彼に造らせた
新兵器の1つね。

 天才科学者も、まったく厄介なモノを、
――って、――こちらが、使った
魔力エナジー・ミサイルも、
確か、彼の開発したモノだったわね?」
 レティが、質問した。

 司法取引とは、裁判結果が出て、
刑期(刑に服する期間。懲役〜年など)が
確定した犯罪者に対して、
警察組織など(この場合は時空管理局)への、
協力を条件に刑を軽くする事である。

「そうです」
 オペレーターが、簡潔に答える。

「痛し痒し、って事か。
 複雑な気分ね」

 良く考えると、ビッグ・タイガーと
ビクトリーの双方に、かなりの数の、
『スカリエッティの作品』が搭載されている。