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緊急指令!鹿目まどかを抹殺せよ! リリカル☆マギカ(第2話

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第12章 卒業式



 それは、ミッドチルダの暦で、
新暦 0080年 4月末。

 世界は、概ね、平和だった。

 その『卒業式』は、元、機動六課の本部隊舎だった
建物を使って行われた。

 卒業生の代表として、壇上に上がり、
大勢の『元 魔法少女達』の前で、挨拶しているのは、
時空管理局の制服を着た『鹿目まどか』だった。

「振り返ると、――いろんな事が有りました。

 私が、覚えているのは、魔法少女達の、
悲しい戦い。

 その誰もが、大切な願いの為、
傷だらけになりながら、命がけで、戦っていました。

 でも、私は、そんな彼女達を、ただ見ているだけで、
ただ恐ろしさに震えていただけで、――。

 私は、考えました。――

 自分に何が出来るのか。
 自分は何をすべきなのか。

 そして、私は、自分の答えを出しました。

 全ての魔女を消し去り、全ての魔法少女を救う事。

 ――それが、自分に出来る最善だと、信じていました。

 ――でも、その願いが、また新たな悲劇を招いてしまいました。

 私にとって、幸いだったのは、――私の間違いを正してくれる
友達と仲間達がいてくれた事です。

 ――本当に感謝しています。

 そして、私は、今日、ある人にもお礼を言いたい。――

 この卒業式には、この4ヵ月間の、戦闘魔導師――養成訓練の
卒業と言う他に、もう1つの意味が含まれています。

 それは、『人間の魔導師』となった私達が、『魔法少女』からの
卒業を成し遂げた、と言う事。

 そのための、システムを開発してくれた、
ジェイル・スカリエッティ博士に、
私は、心からのお礼を述べたいと、思います。

 ――私は、彼の事を、良く知りません。

 彼の犯した罪を、良くは、知りません。

 ――ですので、ただ彼が、私達のために、
実現してくれた事に対してのみ、言葉を送ります。

 私達を、人間に戻してくれて、――

 本当に、ありがとうございました」

 卒業式の会場のあちこちから、すすり泣きが聞こえてくる。

 まどかの語る、――ジェイル・スカリエッティの偉業。

 それは、『魔法少女』を『人間の魔導師』へと、
『変身』させる魔導システム。

 詳しい説明は、難しいが、――

 まず、対象となる『魔法少女』と、本人の
『ソウル・ジェム』をシステムにセットする。

 次に、その両方を、特殊な、
エネルギー・フィールドで包み込む。

 これによって、作業工程の流れの中で、
肉体と魂のリンクが切れないようにするのだ。

 そして、第1段階として、『ソウル・ジェム』を
純粋な魔力エネルギー体へと、変換する。

 次の第2段階として、その魔力エネルギー体の中に、
存在している『人間の魂』を分離する。

 ――『人間の魂』とは、『複素電磁場』と呼ばれる、
言わば『影の電磁場』で、構成されており、
これは、『人間の意識・心』の本体でもある。

 (人間の脳は、実のところ、魂と言うユーザーが、
使用しているバイオ・コンピューターに相当する。)

 この事は、『地球』の物理学者の、ごく一部の人達も、
解明し始めている事である。

 (この分野の、研究を総じて『意識工学』と言う。)

 ――作業工程に話を、戻そう。

 この分離した『人間の魂』を、本人の肉体に、
入れて、肉体と魂を結合させてやる。

 『人間の魂』の位置は、ほぼ心臓の中心である
事は、分かっていた。――理屈は、理解出来ても、
これを機械のチカラで、やってしまったのだから、
やはり、ジェイル・スカリエッティは、
すごい超天才と言うべきかも知れない。

 この段階で、作業を中止すれば、対象となった少女は、
魔法のチカラの無い普通の人間に、戻れるはずだ、
――と言う批判の声が有ったのだが、――
後に残った魔力エネルギー体の中に、本人の
潜在意識の一部が溶け込んでおり、
次の作業を行わないと、後で精神疾患を
引き起こす危険が出てくる事が判明した。

 ――そのため、最終段階は、必ず、
実行されなければ、いけない。

 ――残った、魔力エネルギー体に、特別な処理を
行い、本人に適合する『リンカー・コア』
(魔導師の体内に存在する魔力機関)へと変換する。

 そして、この『リンカー・コア』を体内に入れて、固定する。

 これで、1人の『高い魔力資質を持った』少女の完成である。

 実は、この作業を行った場合、『魔法少女』だった時の、特殊能力や、
魔法特性が、本人に残っている事が多く、『魔導師』となっても、
ほぼ同じ実力を発揮できる事が分かってきた。

 だが、実際には、『魔導師』の肉体に慣れ、
魔力運用と魔法戦闘技術の訓練を、しないと、
実戦では使えない、中途半端な素人となってしまう。

 そのために、この4ヵ月間、戦技教導官である、
高町なのは一等空尉と、ヴィータ二等空尉が、
中心になって、元『魔法少女達』を、
徹底的に、鍛えてくれたのである。

(時間があいた時に、はやてや、フェイトも、手伝っていた。)
(他にも、衣食住の世話を含めて、協力してくれた人物は大勢いたのだ。)

 もちろん、これは、時空管理局の
全面協力が無ければ出来ない事だった。

 ――しかも、親切な事に、――
『魔法少女』が、留守にしている間は、彼女達の世界の、
『魔獣退治』を、管理局の新人魔導師達が、担当してくれていた。

 ――しかし、高町なのはによれば、
『魔獣』というのは、種類にもよるが、管理局の
新人魔導師が、実戦経験を積むのには、
『丁度良い敵』なのだ、と言う事らしい。

「はやてちゃん、……」
 なのはが、となりにいる八神はやてに、小声で声をかける。

「何や?
 今、まどかちゃんの、答辞の最中やで」
 はやては、顔をしかめた。

 こう言うタイミングで、なのはが、
ヒソヒソ話をしてくるのは、珍しい事だ。

「この、4ヵ月の教導だけでも、すごい
費用がかかってるし、『魔法少女の治療システム』
なんて、どれだけお金がかかったのか、いまだに
公表されてない。
 『魔法少女達』との、関係改善は、かなり
進んだと言っても、時空管理局が、
ボランティア精神だけで、そんな莫大な費用捻出を
行ったとも思えない。

 つまり、これは、――
いくつかの次元世界で、活動が報告されている、
――例の『魔導殺し』への対処を、
視野に入れた戦力増強の一環と見ていいのかな?」

 なのはが、確信をついた質問を、はやてに浴びせた。