緊急指令!鹿目まどかを抹殺せよ! リリカル☆マギカ(第2話
――その時、ティアナの、耳に、いや、――
心に届く、友の声。
『ティア ―― ティア! 立ち上がって!
頑張って! 負けちゃ駄目だよ!
ティア――――!!!』
「スバル? 確かに、スバルの声だ!」
部屋を見回すが、そこに、親友の姿は無い。
「そうか。 ―― スバルの念話が、かすかに、
あたしに届いたんだ。
そして、スバルの魔力が、リボルバーナックルの
虚像を造り出したのかも。
――まったく、心配性なんだから」
ティアナは、親友の顔を思い出して、微笑む。
――その時、ティアナの目に、
不思議な光が、映りこんだ。
部屋の机の上に、ある物、それは、――
「あれは、――ティーダ兄さんが、あたしの誕生日に、
買ってくれたオモチャのピストル?
でも、あの光は?」
それは、――ティアナの色と、同じ、
美しい、茜色の、魔力光を放っていた。
「!! ―― そうか。
そうなんだね。
そこに、いたんだ。
あたしの、――大切な、相棒」
茜色の光に包まれた、兄の形見を手に取り、
それを、胸に抱きしめる、ティアナ。
「お願い!
あたしに、チカラを貸して!
クロスミラージュ!
そして、――動けぇ!
あたしの、――本当の体!!
………………
クロスミラージュ! ――――
シュート・バレット!
モード・物理破壊!
レベル・対人殺傷!」
自分の腕に、オモチャのピストルの銃口を、
押し当てて、―― トリガーを引くティアナ。
◇ ◇ ◇
―― ガギュ――――ンン ン ン!!!! ――
突然、鳴り響いた銃声に、見学者達の間に、緊張が走る。
「ティ、ティア?!」
スバルが親友の姿に驚く。
練習場エリアの、荒野のほぼ中央。
腕を押さえて、立ち上がるティアナ。
その、腕から、大量に出血している。
ティアナは、クロスミラージュで、自分の腕を、
撃ち抜いたのだ!
――もちろん、魔力弾は、物理破壊の設定で、
人を殺せる威力が、有る。
ティアナと、同じく立ち上がって、
彼女から、すばやく距離を取る杏子。
「へへっ!
まさか、自分の腕に、銃弾をぶち込んで、
――その痛みで、あたしの幻覚魔法を、
打ち破る、とはねえ。
恐れ入ったよ」
『ニヤリ』と、笑う杏子。
幻覚魔法を、長時間持続したので、
結構魔力を消費したらしく、
その顔には、疲労感が見えた。
「よくも……よくも……よくも――!!
よくも、あたしの大事な思い出を――!
『変な魚』の事も含めて、――
もう完全に、あたまに来た!
覚悟しなさい!
杏子!」
高高度に、ジャンプした後、空中に停止するティアナ。
「ええっ?!
ティアナが、空中戦?
どうやって?」
目が、点になっている、マリエル技術官。
「そ、そう言えば、ティア、……ここしばらく、
『地球』の『ギアナ高地』で修行してたって、
言ってた、――」
解説するスバル。
「佐倉さんも、『地球の中国、奥地』で何かの
修行をしていたとか、……?」
巴マミも、呟く。
「2人とも、一体何の修行しとったんや?
今、ティアナ、空中に静止しとるで?」
はやてが、空に止まっているティアナを見つめる。
本来、陸戦魔導師だったティアナは、
空中浮遊さえほとんど、できなかったはずである。
「こりゃ、ほとんど『マンガ』の世界や!」
信じられないと言う顔のはやて。
それは、杏子も同じであった。
「な、何する気だ?」
杏子が、上空のティアナを睨む。
「行くわよ! クロスミラージュ!」
ティアナは、相棒に声をかけた。
〔ザ・ファイヤリング・ロック イズ キャンセル!
ロードカートリッジ!〕
クロスミラージュが、3発、魔力カートリッジを
ロードする。
「咎人(とがびと)に、滅びの光を!」
ティアナが呪文を詠唱すると、彼女の足元に、
茜色のミッド式魔法陣が、展開した。
「星よ、集え! 全てを撃ち抜く光となれ!」
〔ザ マウント スタート!〕
(魔力集束、開始!)
周囲から、茜色の、魔力光が、――流星の様に、
ティアナの両手の、銃口に集まっていく!
それは、巨大な魔力球(魔力砲台)となった。
「お、おい! あれ、まさか?!」
ヴィータが、叫ぶ。
「しゅ、集束砲撃?!」
息を飲むシャマル。
「や、やめんか、ティアナ!
そんな、位置と、角度で、集束砲なんて撃ったら、
見学者達まで、巻き込んで、まうで!
結界も、持つかどうか分からん!
ウチらは、まだ防御出来ても、
魔力耐性の低い、一般人も、おるんやで!」
はやてが、上官として、命令口調で警告するが、
ティアナは、魔力の集束を続行している。
「う、撃てる訳がねえ!
は、はったりだ!」
杏子も、そう叫んだ。
しかし、――
「撃つつもりだ!
ティアは、本気で、撃つ気だよ!」
親友の、スバルが、確信を持って発言した。
「まさか、――じょ、冗談だよな。
う、撃てる訳が、――」
呟く、ヴィータ。
しかし、――
「いや、本気のようだぞ」
シグナムが、スバルの発言を肯定する。
〔スターライト・ブレイカー!〕
さらに、クロスミラージュの、AIの音声が、
それを、証明した。
「ひょっとして、ティアナ、――
怒りで、我を忘れているんじゃ?」
青くなっているシャマル。
「お、おい!」
杏子が、目を見開いた。
「スターライトォ、――」
ティアナの声が、空に響く。
「や、やめやがれっ!!」
びびる、ヴィータ。
―― その、瞬間、
―― ヒュン ン ン !!! ――
「へ?」
バカみたいな、声を出す杏子。
上空のティアナの姿が、一瞬で消え去り、
彼女は、杏子の眼前にいた!!
「し、しまっ !!」
「ブレイカ――――――――――!!!!!!!」
「ぽぎゃああああああああああああっ!!!!!!」
ゼロ距離射撃による、――茜色の巨大砲撃に、
文字通り、ぶっ飛ばされた杏子。
そして、――
―― どっぱ――――――ん!!!!! ――
杏子は、丁度、背後に位置していた湖の中
(実際には海中)に、大きな波しぶきを上げて、
突っ込んでいった。
――――――――
「か、かっこ、わりー。
ちくしょう!
こ、これで、終わりかよ!
この、杏子様ともあろう者が、
なさけねえー」
水中深く、沈みながら、心の中で
独り言を呟く杏子。
「でも、ま、少しは楽しかったから、
まあ、いいか……」
『杏子! 杏子!
……………… 杏子!
杏子ってば!』
「うっせえなぁ!
誰だよ?
あたしは、今、
敗北の味をしっかと味わってんだからって、
…………?
!!
まさか!
その声!!」
杏子が、驚く。
作品名:緊急指令!鹿目まどかを抹殺せよ! リリカル☆マギカ(第2話 作家名:気導士