緊急指令!鹿目まどかを抹殺せよ! リリカル☆マギカ(第2話
「え?
何これ?!」
まどかは、自分の心臓のあたりが、光っている事に、
気づいた。
それは、小さな光の、球体であり――金色に光ったり、
ピンク色の光になったり、ある時は、七色の不思議な
輝きを放ったり、刻々と変化していた。
「ゾラさん――
これって、一体?」
「それはな――お前の、『愛』じゃよ」
「愛……?」
「まどかよ――実はな、ワシは、お前の過去について、
色々と情報を集めてみた」
意外な事を、言い出すゾラ。
「私の過去について?」
「うむ。このゾラを造って、お前をサポートしていく
ためには、お前の事をもっと知る必要があったのでな。
悪いとは、思ったが――さやかや、リイン、そして、
高次元生命体となった、他の魔法少女達にも、話を
聞いて、ワシなりにデータをまとめた」
「………………」
「そして、ワシは、思った。
お前は、今まで『正義のチカラ』のみで、戦い続けて
きたようだと」
「『正義のチカラ』ですか?
う〜ん。
今まで、そんな事、考えていませんでしたが?」
「まあ、自分では、気がついていなかったので
あろうな。
例えば、お前は、自分が犠牲になっても、他の
魔法少女達を、救おうとした。
それは、まぎれも無く、正義じゃな。
しかし、残された暁美ほむらの、悲しみまで、
本当に、お前は、良く考えたのか?」
「そ、それは…………
だ、だけど……だけど!」
「じゃからな――
これからは、『愛のチカラ』も、お前の魔力に、
加えてはどうじゃ」
「『愛のチカラ』を?」
「『愛のチカラ』を持つ者の実例として、もっとも
分かりやすいのは、お前の親友である、暁美ほむら
じゃな」
「ほむらちゃんが?」
「暁美ほむらは、お前への愛ゆえに、自己を犠牲に
して、懸命に戦い続けてきた」
「確かに――
ほむらちゃんは、どんなに傷だらけになっても、
自分の命を危険にさらしてでも、私のために、
戦ってくれていた。
私が、この世界に戻ってからも、ずっと、
私を見守っていた。
今だって! ――」
「あの、ほむらの行動そのものが、
『愛のチカラ』と言って良い。
そして、ほむらが、愛の戦士ならば――
悪と戦う、正義の戦士が、お前と言う訳じゃ」
「私が?
悪と戦う、正義の戦士?」
「正義と対立するモノ。
それが悪。
宇宙には、確かに、悪が存在する。
悪意・悪人・悪党・悪魔などの『悪しきモノ達』。
『正義のチカラ』は、そう言った『悪しきモノ達』を
倒す事は出来る。
その結果、宇宙に、一時的な平和を
もたらす事にはなる。
だが、それでは、駄目なのじゃ。
倒された『悪しきモノ達』から、また、『怒り』や
『ウラミ』が、生まれるからのう。
それらは、人の運命を、悪い方向に、ゆがめて、
――宇宙の因果律をも、狂わせてしまう。
そのために、倒すのではなく、救うためのチカラ、
あるいは、許すためのチカラが、必要なのじゃ」
「救うための――
許すための――チカラ?」
「それが、『愛のチカラ』じゃよ。
人は、とかく『正義のチカラ』に頼る。
その方が、悪には、楽に勝てるからのう。
素手で、どうやって、悪人と戦えば良い?
もし負けたら、ケガをしたり、ヘタをすれば、
死んでしまうではないか。
誰でもそう考える。
――ワシも、そう思うよ。
しかし――人間の持つ愛こそが、どんな邪悪で巨大な
チカラにも、打ち勝ち、――なおかつ、悪魔でさえ、
救う事の出来る、――
この宇宙で、最大最強の武器なのじゃよ」
「あ……以前、ママが言ってた。
『正しい事』だけを、積み上げても、
ハッピーエンドには、ならない。
皆が、自分の正しさを信じて、意固地に
なるほど、幸せは、遠ざかるって」
「うむ。
そのとおり、じゃな。
有史以前から、今現在に到るまで――
人は自分の正義のみを信じて、
他人の正義を否定し、
醜い争いを、繰り返してきた。
それが、戦争と言う、大きな悲劇を生んだ。
正義が、人を、幸せにするとは、限らん。
―― 人間の愛だけが、
人間を幸せにする、唯一のチカラなのじゃよ。
――――
まどかよ。
宇宙の平和と、
人々の、幸せを守るために、
その『愛のチカラ』で、全てを、救うのじゃ!」
「分かりました!
私――やってみせます!!」
「もしもーし!
我は、待ちくたびれたぞー。
ふああああぁ〜。(あくび)
作戦会議は、もう、終わったのかな〜?」
黄金魔王は、ふざけた様に、空間に寝そべった
ポーズをとって、あくびをしている。
「あ、あのヤロウ!」
杏子は、ムカムカしている。
「ホントに、ムカつくヤロウだぜ!」
杏子に、同調するヴィータ。
まどかは、六人の魔導師に、目を向けた。
「ヴォルケンの皆さんは、防御をお願いします。
六人は、私の周りに!」
まどかは、全員に頼む。
「まどか?
どうするつもりなの?」
ほむらが、尋ねた。
「みんなのチカラを、私に貸して!
みんなの命は――私が守る!
そして――
宇宙の平和と、
人々の幸せを、みんなで、守る!!」
「おお?
よっく分からんが、よっく分かった!
みんな、まどかちゃんに、全魔力を、
集中させるんやあ!」
はやてが、全員に号令する。
「「おおう! やってやるぜえ!」」
杏子と、ヴィータの声がハモる。
そして――『七人の魔導師』は、
鹿目まどかを中心に集まった。
「む?!」
訝しい表情の黄金魔王。
「みんな――私に魔力を!!」
まどかの声が、異空間に響く。
「「「おう!!!――」」」
「アンジェラ・バード!!」
まどかの、声とともに、白い魔力光が、
七人を包み込む。
「その技は、通用せんぞ!!
ぐははははは!!」
バカにして笑う魔王。
「通用させます!
みんなの魔力と――その『想い』
そして、私の『愛のチカラ』で!!!」
大型化した『白いタカ』の頭部で、
まどかが叫ぶ!
『七人の魔導師』が融合した『白いタカ』は、
魔王に向かって、飛翔した!
「なにぃ?!」
驚愕する、黄金魔王。
「黄金の魔王!
いや、ロード・オブ・ナイトメアよ!」
「ぬうっ?!
そ、その声、その気配!
貴様は、まさか?!
魔女――サリー・ザ・マジシャンか?」
「おう!
その、まさかよ!」
「確か、あのリーダー格まどかと
戦って死んだはずでは?!
貴様、生きておったのか?」
「もちろん、生きているとも!
こたびは、おぬしに敗北と言うモノの、味を
教えてやるために、推参した!」
「なんだと!
貴様?」
「あまり、私達を、なめない事ね!」
叫ぶ、ほむら。
「あんま、人間を、なめんじゃねえぜ!
ええ、神様よお!!」
杏子も、吼える。
「このまま、行くのよ!
鹿目さん!」
作品名:緊急指令!鹿目まどかを抹殺せよ! リリカル☆マギカ(第2話 作家名:気導士