かんさつにっき
予想どおり、はんがりーのメスを水そうに入れてあげると、ぷろいせんはびっくりするほど元気になりました。
なぜか、なかなか近くによろうとはしないのですが、ちょっとはなれた場所で、ごきげんでひとりうるさく歌ったり、ゆれたりしています。げんきんなやつです。
はんがりーは少し迷わくそうにしながらも、元気になったぷろいせんを見てうれしそうになきました。がちゃがちゃしたぷろいせんの声とはまったくちがう、鈴がふるえるような、びっくりするほどきれいな声でした。
「おじいちゃんの言ったとおり、ぷろいせんはすごく元気になったよ」
「それはよかった。二ひきは仲良くしていますか?」
「うーん。それがね…」
ぼくは、ゆうべ二ひきがにぎやかな声でなきあいながら、ものすごい戦いをくりひろげていたとこを話しました。ケンカのつよいはずのぷろいせんを、あのきれいなはんがりーがボコボコにしていたのです。ぼくは心配でドキドキしてしまいました。
「だいじょうぶ、それは、じゃれているだけですよ。ぷろいせんとはんがりーはすこし変わった方法で仲良くすることが多いのです」
「そっかあ!よかった。仲が悪いわけじゃないんだね!」
ぼくはほっとました。だって、さんざんな目にあっても、やっぱりぷろいせんははんがりーが大好きなようだからです。
じぶんのエサのおいしいところをはんがりーにあげたり、ひろってきた花びらでふわふわの毛並をかざってあげたり、はんがりーがきれいな声で歌うのを、ちょっとはなれたところでじっと聞いていたりしています。
それまで自分が使っていたやわらかい寝床をはんがりーにゆずって、土の上で寝ているので、銀色の体は土まみれです。
それでもあいかわらず毎日上きげんなのは、きっとすきな子と、一しょだからなのだと思います。
「ねえおじいちゃん、ひょっとしたらこれでぷろいせんも、赤ちゃんがつくれるかもしれないね!」
プッ
とつぜん本田のおじいちゃんの鼻から赤いものがあふれました。
「どうしたのおじいちゃん!鼻血がでてるよ!!!」
「だいじょうぶです。いやはやさすが7さいじ。むじゃきにすばらしいていあんをなさいますね」
そう言っておじいちゃんは、しばらく物置きをがさがさすると、「二ひきにプレゼントです」と、ブリキでできた小さなベッドをくれました。
おじいちゃんの言っていることは、けっきょくよくわかりませんでしたが、ぼくは、かんさつをしているうちに、すこしずつ二ひきの様子がおかしくなっていくのに気づきました。
にぎやかなケンカの数がしだいにすくなくなり、そのかわりに、それぞれちがうばしょでおとなしくしている時間がふえていきます。
はんがりーは、ぷろいせんから見えないところで、ひんぱんに身づくろいするようになりました。どんどん色つやの良くなるはんがりーを、ぷろいせんははなれたところから、じっと見つめて苦しそうにしています。
「発情ですね。ついにきましたねこの時が!わっふるわっふr」
「おじいちゃんおじいちゃん!そんなにうでをぶんぶんしたら、また腰をいためてしまうよ!」
「おそれいります、しつれいいたしました、こうふんしてしまいまして、つい」
「だいじょうぶかなあ。二ひきともどんどん元気がなくなっていくんだ。びょう気とかじゃないかなあ?」
「だいじょうぶ。ぷろいせんをはんがりーのメスとずっと一しょにさせておくと、ふつうにおこることですからね」