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あたし、やめないわ。

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「いつだって、未来はわからないけど~♪」


「あの・・・リナさん?」

彼女の後ろを歩いている錫杖をもった黒髪の青年は、そろそろ戸惑って声をかけてきた。

目の前の彼女はご機嫌そうである。

彼女は振り返った。


「なによ?」

「いえ、ずいぶんとご機嫌のようですね。でも、同じ歌ばかりを歌ってらっしゃるな~と、思いまして。」

「なによ、聞き飽きたっていうの?」

「まぁ、それもありますけど、あまりにも特徴的な声ですので、歌はそろそろやめたほうがよいのではないですか?
 そろそろ、町に着きますし、
 ほら。周りをご覧くださいよ。
 人の往来も多くなってきましたし、あなたのことを見ていらっしゃる方もいらっしゃいますよ?」

「なぁにいってんのよ!特徴的な声ですって!!
 あたしの歌がへたくそってことなの!?」

「まぁまぁ、リナさん。
 そうともいいますけど。」

「ねぇ、ゼロス。
 みんな見てるのはね。
 このあたしがあまりにも美少女すぎて、さらにはこの美声だもんだから、目が離せなくなっているのよ。」


「それにー・・・」


「この歌はね、ゼフィーリアに伝わる歌なのよ?いい曲でしょう?命の賛歌の歌なのよ?」

「ええー!?そんな歌だったんですか~!?僕らにとっていい曲なわけないじゃないですか!!」


「そんなの知らないわよ!」


「とにかく!あたしこの歌を歌うのやめないわよ!
 あんたがあたしの歌を聞いて涙を流すまで!」


「心をこめて交わすなら~♪」


「リナさん。魔族の僕が歌を聞いたからって、感動して涙なんて流すわけないって知っているでしょう?
 逆にそんな命の賛歌なんて聞いたら、精神ダメージを受けてしまいますよ!
 だから、リナさんの歌声もさることならば、この歌を聞くとなんだか気分が悪くなってしまっていたのですね!?」


「へっへ~ん!こうなったら、もっと歌い続けてやる~!」


「これは新手の魔族いぢめですか~~~!?」

彼にはわかっている。

きっとしばらくこの少女はこの魔族の青年がいやがる歌をやめないだろう。

少女はそういう性格だ。

生への賛歌を歌いまくって、自分の存在をあやぶませるに決まってる。

こうなったら、本当だったならばお役所仕事なんかやりたくなどないけれど、アストラル世界から群狼の島へ行って、主人のそばで、こきつかわれていたほうがましだ。

青年は後ずさりをして、では失礼とばかりに、姿を消した。


「こーーーーら!!逃げるな~~~~~~~~!!
 あたしの歌をきけーーーーー

 ゼロスゥーーーーーー!!」


(やーーーーーですよ!!!)

彼は心の中で舌をぺろりと出した。
作品名:あたし、やめないわ。 作家名:ワルス虎